「テロワール（Terroir）」とは、一言で言えば、特定の地域が作り出す食品やワインに与える独特の「風味」や「個性」を指します。
ですが、このようなシンプルな定義では、テロワールが持つ多面的な影響を十分には伝えきれていないと感じます。というのも、テロワールは単なる「風味」だけでなく、地域の文化、環境、さらには持続可能性と密接に関連しているからです。
そしてこのテロワールという概念・考え方は、今日のエシカルでサステナブルな消費において非常に重要な要素となっています。ナチュラル、オーガニック、サステナビリティ、エシカル――これらの言葉がますます多くの人々にとって価値ある選択基準となる中で、テロワールの理解はそれらの選択をより意味深く、そして効果的にする鍵となるはずです！
そこでここでは、テロワールがどのように各地の製品と文化に影響を与え、それがエシカルで持続可能な選択にどうつながるのかを見ていきます。
テロワールとは
「テロワール（Terroir）」とは、フランス語で「土地」や「地域」を指す言葉であり、一般的には特定の地域が生産する農産物やワインに与える独特な性質や特性を指します。
この概念は、土壌の質、気候、（畑の）高度、水質、そして人々の農業や生産に対するアプローチなど、多くの要素によって形づくられています。
そのため「テロワール」という語は、同じ種類の作物やワインでも、異なる地域で生産されたものとは違う風味や性質を持つ理由を説明するのに用いられます。
たとえば、フランスのワイン産地ボルドーやブルゴーニュでは、それぞれの地域特有のテロワールが、ワインに特定の風味や香り、テクスチャーを与えます。これは（本来の対象であるワインから派生した）コーヒーやチーズ、オリーブオイル、お茶、さらには肉や魚に至るまで多くの食品にも当てはまります。
この概念は、最近では持続可能性やエコロジーとも関連づけられることが多く、地元の持続可能な農業実践や伝統的な生産方法が、テロワールを保つ上で重要とされています。そのため、テロワールは単に「風味」や「品質」だけでなく、地域社会や環境、文化に対する包括的な影響も含んでいると言えるでしょう。
テロワールと持続可能性
テロワールの考え方に基づいたエシカル（倫理的）な土壌の使用方法は、美味しいワインなどを生み出すだけでなく、その土地と人々、そして地球全体に対しても重要な意味を持っています。
持続可能性を考慮した土壌の使用方法は、化学肥料や農薬の使用を極力抑え、その土地が元々持っている微生物や生態系を維持します。これは、地球温暖化や土地の乱開発といった大きな環境問題に対する解決方法のひとつになるのです。
特に注目すべきは、地域社会にもたらす多面的な影響です。地域に根ざした持続可能な農法は、地元の雇用を生み、経済に貢献します。
フランス・ボルドー地方の一例を挙げれば、そこではバイオダイナミック農法（オーガニック農法の一種）が採用されており、地元の方が雇用されています。さらに、この方法で作られたワインは、消費者がよりエシカルな選択をする手段ともなっています。
地域社会との強いつながりは、持続可能な土地管理がもたらす「社会的資本」を形成し、これがまた新しい持続可能なプロジェクトを生むサイクルを作り出します。
このようにして、エシカルな土壌の使用方法はただのトレンドでなく、テロワールの維持と地域社会の発展に必要不可欠な要素となっているのです。
テロワールとナチュラル・オーガニック製品の関係
ナチュラル・オーガニックを特徴とする製品の多くは、テロワールの特性と密接に関係があります。というのも、これらの製品が生産される場所の土壌、気候、そして地理的な要素は、その味わいや品質、さらには栄養価にも影響を与えるからです。
例えば、カリフォルニア州の特定の地域で作られたオーガニックオリーブオイルは、その地域独特の温暖な気候と石灰質の土壌によって特有のフルーティな風味が形成されます。
ナチュラルやオーガニックな製品を選ぶ際、そのテロワールの背景を理解することは、単に健康や環境への影響を考える以上の意味があります。それは、製品が持つ「個性」や「ストーリー」を理解することで、より納得してエシカルな選択ができるからです。
このように、テロワールはナチュラル・オーガニックな製品がもつ独自の価値を形成し、消費者と生産者双方にとって新しい価値を創出します。
【参考サイト】
・日清オイリオ 公式サイト「オリーブオイルの産地と特徴」
・日清製粉グループ 「オリーブオイル専門店「オリオテーカ」に聞く、オリーブオイルの基礎知識」
テロワールとサステナビリティ
長期的視点で行われるテロワールの管理は、製品の質だけでなく、地球環境と地域社会にも責任を持つことを意味しています。というのも、テロワールは、環境への影響を最小限に抑え、自然資源を効率的に利用する方法が求められる概念だからです。
例えば、フランスのあるワイナリーは、持続可能な農法を採用してCO2排出量を削減することで、その地域特有のテロワールを長期的に保全しています。
また、日本の有機栽培茶は、自然と調和した農法によって、土壌の養分と水資源を維持し、高品質な茶葉を生産しています。
実際には、持続可能なテロワール管理は、製品が高価になるリスクもあるため、生産者と消費者双方にとって課題となることもあります。ですが、その価格は地域社会と環境への長期的な投資とも言えるでしょう。
【参考文献】
・日本土壌協会『第4部 茶の有機栽培技術』
・児玉 徹：流通経済大学流通情報学部 准教授著、『フランスのワイン産地における環境保全型の地域ブランド政策』
テロワールと環境・地域社会の未来
これまで触れたように、テロワールは単なる土地の特性以上のものです。それは食品やワイン、その他の製品が持つ独特の「個性」を形成する要素であり、地域社会や環境に対する影響も考慮しなければならないでしょう。
サステナビリティを重視した考え方が、このテロワールの多面的な価値を守る鍵となるのです！
未来においては、エシカルな土地利用と持続可能な資源管理が一層重要になるかと思います。消費者がより環境に配慮した製品を求める傾向が強まる中で、テロワールを正しく理解して尊重することが、製品価値を高めるだけでなく、地球環境を守る基盤となると考えられます。
最後に、私たち一般消費者もまた、地域社会や環境に責任を持つ存在として、テロワールの価値をどうすればこの先も守れるかを考える必要があります。このような理念が広まれば、テロワールはワインやその他の食材の枠を超えて、さらなる持続可能な未来への道を拓く重要な要素となると期待できます！
【参考サイト】
・一般社団法人日本野菜テロワール協会公式サイト
・Firadis WINE COLUMN
・ENOTECA online 『ワインの味を決める重要な要素「テロワール」とは？』
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