「ジェンダー(gender)」という言葉は、今や社会、文化、さらには個々の生活にも深く関わるテーマとなっています。
しかし、この重要な概念が実際に何を意味し、どのように私たちの日常や価値観に影響を与えるのかについては、しばしば誤解や曖昧さがあります。
そこでここでは、ジェンダーという言葉・概念をきちんと知ることがなぜ重要なのかという基本的な疑問からスタートし、さらにその概念がどのようにエシカルな視点やサステナビリティ、ナチュラルとオーガニックなライフスタイルに関連するのかを見ていきます。
ジェンダーに対する包括的な理解を深めることで、よりエシカルかつサステナブルな未来への一歩を踏み出す一助になれば幸いです。ぜひ最後までお読みいただき、ジェンダーが持つ多面的な側面に思いを巡らせてみてください!
Contents
ジェンダーの基本的な定義
「ジェンダー」という言葉は一般的に、男性と女性の社会的・文化的な役割や属性について語られる際に使用されます。この概念は元々、生物学的な性別――すなわち、男性と女性の生物学的な違い――とは独立した形で考えられました。
生物学的な性別は、通常、出生時の解剖学的特徴や遺伝子によって「男」と「女」に分類されます。しかし、ジェンダーはこれとは異なり、社会的な構造、文化的な規範、歴史的な背景などによって形成されます。
この理解は特に、1960年代以降のフェミニズムや社会科学の研究で広がりました。研究者たちは、人々の行動や価値観、さらには社会的な地位や機会に与える影響を考慮し、ジェンダーが単なる生物学的な特性以上のものであることを明らかにしました。
現代においては、ジェンダーには非二元的な観点も強く取り入れられています。つまり、ジェンダーは男女の二元論だけでなく、トランスジェンダー、ジェンダークィア、ノンバイナリー、アジェンダーなど、多様なジェンダーアイデンティティを包括する広がりを持つ概念と認識されています。
【派生語:ジェンダーフリー】
「ジェンダーフリー」は、特定の性別(男性や女性)に関連づけられることなく、すべての人が平等に参加できるようにする考え方や態度を指します。この概念は、性別が社会や文化によって一定のロールや責任、期待に縛られることを批判し、性別による制限や偏見から解放することを目指します。
【派生語:ジェンダーレス】
「ジェンダーレス」は、主に外見やスタイル、ファッションにおいて、男女の性別に基づく特定のカテゴリーに縛られないスタイルや態度を指すことが多いです。ジェンダーレスなファッションやアイテムは、男性でも女性でも使用できるようデザインされています。
【トランスジェンダー】
トランスジェンダー(Transgender)とは、出生時に医療的に割り当てられた性別(生物学的性別)と自己が認識するジェンダー(ジェンダーアイデンティティ)が一致しない人々を指します。この用語は非常に広範であり、多くのサブカテゴリを含んでいます。
【ジェンダークィア】
ジェンダークィア(Genderqueer)は、伝統的な「男性」または「女性」といったジェンダーのカテゴリーに完全には当てはまらないと感じる人々を指す用語です。この用語はジェンダーの多様性を認識し、一般的な男女の二元論から離れたジェンダーの自己認識や表現に対する包括的な概念を指します。
【ノンバイナリー】
ノンバイナリー(Non-Binary)とは、自身を「男性」でも「女性」でもないと認識する人々に使われる用語です。ノンバイナリーはジェンダーのスペクトル上で中間的、または全く別の位置にいると感じる人々に対しても使われます。この用語は、ジェンダーが男女の二元論だけでは説明できない多様性を尊重する目的で用いられます。
【アジェンダー】
アジェンダー(Agender)は、自分自身にジェンダーを感じない、性別のない人々を指す用語です。この用語は、ジェンダーの概念自体が自分には当てはまらないと感じる人々に対しても使われることがあります。※ノンバイナリーと自認する人にも使用されます。
ジェンダーとエシカルな考え方
ジェンダーに関する問題は、単に社会的・文化的なラベリングを超え、エシカル(倫理的)な次元での重要性も担っています。
ジェンダー平等という概念は、男性と女性が教育、就労、健康、そして政治参加などの多くの面で平等な機会と扱いを受けるべきであるという道徳的価値観に基づいています。この点は、社会正義と平等という大きなエシカルな枠組みの中で考慮されます。
さらに、ジェンダーの多様性を尊重することは、人々が自己認識するジェンダーに基づいて平等な扱いを受けるべきだという道徳的義務につながっています。
トランスジェンダー、ジェンダークィア、ノンバイナリー、アジェンダーなど、多様なジェンダーアイデンティティが存在する現代社会で、これらのジェンダーに対する理解と尊重は、個々の人格や人権を保護するエシカルな態度として求められています。
また、ジェンダー差別やジェンダーに基づく暴力は、エシカルな観点からも極めて問題視されています。これらの側面についても無視するわけにはいかず、ジェンダーのエシカルな考察は、個人の尊厳を尊重する文化や法制度を作る上で不可欠です。
ジェンダーとサステナビリティの関係
サステナビリティとジェンダーの関連性はしばしば見落とされがちですが、これらは密接に関わっています。ジェンダー平等が持続可能な開発にどれほど寄与するかという点は、特に重要です。
具体的には、女性が経済参加や教育において平等なチャンスを得た場合、労働力が拡大し、経済成長が促されるだけでなく、家庭内での健康や教育レベルも向上します。これが地域や国全体のサステナビリティに寄与するのです。
事実、世界的な目標であるSDGs(持続可能な開発目標)でも、ジェンダー平等は独立した目標として設定されており、その他の目標達成にも必要不可欠な要素とされています。
反対に、サステナビリティの推進はジェンダー平等にも多大な影響を与えます。例えば、持続可能な農業が実施されることで、女性の農業従事者の収入や地位が向上する場合があります。また、環境負荷の軽減は、水資源や食料の安全性といった問題にもポジティブな影響を与え、これらは特に女性やマイノリティジェンダーが直面する課題として知られています。
ジェンダーとサステナビリティは互いに影響を与え合う循環的な関係にあるため、どちらか一方を取り上げる際には、もう一方も考慮に入れるべきと言えます。ジェンダーとサステナビリティは、公平で持続可能な社会を目指す上で絶対に無視できない関係性を持っているのです。
【補足:ジェンダー・ギャップ指数2023 日本は最低レベル】
世界経済フォーラムが、経済、教育、保健、政治の分野毎に各使⽤データをウェイト付けしてジェンダー・ギャップ指数を算出している。
■日本の順位:125位/146か国 (2023.6.21発表)
(出典:内閣府 男女共同参画局「男女共同参画に関する国際的な指数」)
ジェンダーとナチュラル・オーガニックの関係
ナチュラルやオーガニックな生活とジェンダーがどのように関連しているかという問題は、一見遠く感じられるかもしれませんが、実は非常に密接な関係にあります。
ナチュラルやオーガニックなプロダクトは、人々が健康や環境に配慮した生活を送るための手段として注目されています。
これにジェンダーがどう結びつくかというと、例えば、女性特有の健康問題や、トランスジェンダー、ノンバイナリー、ジェンダークィアなどのジェンダーマイノリティが直面する健康課題に対して、ナチュラルやオーガニックなプロダクトが解決策を提供する可能性があるのです。
更に、ジェンダーによって選ぶ製品やサービスが異なる場合があり、その選択が環境や健康に与える影響も大きく異なることがあります。男性と女性、またはその他のジェンダーアイデンティティが、ナチュラルやオーガニックな生活にどう影響を受け、またどう影響を与えるかは重要な議論のポイントとなります。
なお、子供たちにナチュラルやオーガニックな選択肢を教えることは、ジェンダーに関わらず将来的に健康で持続可能な社会を築く土台となります。
このように、ジェンダーとナチュラル・オーガニックな選択は密接に関係し合っており、それぞれがもたらす影響を理解することで、より健康で、より平等で、より持続可能な未来を作る手がかりになり得ると考えられるのです。
ジェンダーの誤解と問題点
ジェンダーという概念に対する誤解は広範で、多くの場合、これが引き起こす問題は深刻です。最も顕著な誤解は、「ジェンダーと性別は同じ」という考え方。
この誤解は、教育機関や職場、さらには日常生活においても、男女間での不平等やジェンダーバイアスを助長します。特に、女性がテクノロジー関連の職種に就く障壁や、男性が育児に参加する社会的障壁といった問題があります。
次に、トランスジェンダー、ジェンダークィア、ノンバイナリー、アジェンダーといったジェンダーマイノリティが対象となる誤解やステレオタイプです。これらの誤解は、健康ケア、法的な支援、さらには基本的な人権にまで影響を及ぼすことがあります。
例えば、トランスジェンダーの人々が適切な医療ケアを受けられない、或いはジェンダークィアの人々が職場で差別されるといったケースがこれに該当します。
そして、このような誤解や偏見は、不健康な精神状態、低い自己評価、高いストレスレベルといった心の健康に対する負の影響をもたらすと指摘されています。メンタルヘルス(精神的な健康)問題はジェンダーに関わらず、全ての人々に影響を及ぼし得る重大な問題なのです。
ジェンダー問題と未来への展望
ジェンダーは単に男女の違いを示す言葉ではなく、エシカル・サステナビリティ問題、健康的なライフスタイル、さらには社会に存在する多くの誤解や問題に直接的な影響を与えるということを、お分かりいただけたかと思います。
世界経済フォーラムの報告によれば、ジェンダー平等が達成されるまでには現状で約100年かかるとされています。そのため、ジェンダーに対するよりエシカルでサステナブルなアプローチが、これからの社会においてますます重要になるでしょう。
世界レベルで一人ひとりがジェンダーについての誤解や問題点に対処し、多様性と包摂性をポジティブに意識することで、結果的に多くの方にとってより良い未来を築いていけるのではないでしょうか。
【参考サイト】
・UN WOMEN日本事務所公式サイト内「ジェンダーとは?」
・国立研究開発法人科学技術振興機構公式サイト内「ダイバシティー推進」
・内閣府 男女共同参画局「男女共同参画に関する国際的な指数」
・unicef 日本ユニセフ協会公式サイト内「5.ジェンダー平等を実現しよう」
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『ヴィーガンとは?持続可能性を追求するヴィーガンライフの魅力と意義』
『クリーンビューティとは?エシカルコスメとは違う?人にも地球環境にも配慮した美容製品を選ぶ意義』
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