動物たちの快適で幸福な生活を保護・管理する「アニマルウェルフェア（動物福祉）」とは？倫理的な観点からの配慮や人間との関係、環境への影響など重要性を探る。アニマルウェルフェアが持つ意義とは？詳しく解説し、共に取り組む大切さを伝えます。
「アニマルウェルフェア（Animal Welfare、動物福祉）」とは、動物たちが快適で幸福な状態で生活できるように保護・管理する概念を指します。
この考え方は、動物たちに適切なケアと生活条件を提供することを重視しています。なお、アニマルウェルフェアは、家畜やペットだけでなく、野生動物に対しても適用される重要な倫理的概念として、世界中で広く認識されています。
アニマルウェルフェアがなぜ重要なのかと言えば、動物たちの健康や心の安寧だけでなく、人間社会や環境にも影響を及ぼすからです。アニマルウェルフェアの向上は、以下の点において重要な意義を持っています！
１．倫理的観点からの配慮： 動物は感情を持つ存在であり、苦痛やストレスを感じることがあります。アニマルウェルフェアは、動物たちの尊厳と福祉を保護するために不可欠な要素です。
２．人間の健康と関係：アニマルウェルフェアが十分に考慮されない状況では、動物から人間へ感染症が広がるリスクが高まります。たとえば、農場やペットの不適切な管理は、公衆衛生にも悪影響を及ぼす可能性があります。
３．持続可能な環境の確保：アニマルウェルフェアを向上させることは、環境保護と持続可能な農業・畜産産業の実現につながります。適切なケアは生態系にもプラスの影響を与えます。
この記事では、アニマルウェルフェアの重要性についてさらに詳しくご説明し、なぜ私たちがアニマルウェルフェアに責任を持つべきなのかをご紹介します。
アニマルウェルフェアに向けた意識を高め、より良い未来のために共に取り組むことの大切さをお伝えできればと思います。
Contents
アニマルウェルフェアの指標と基準
アニマルウェルフェアの向上を実現するためには、動物の幸福度を測るための適切な指標と国際的な基準が重要です。
これらの指標と基準は、動物たちが健康で快適な環境で生活できるように保護するためのガイドラインとして、世界中で使用されています。
【動物の幸福度を測る指標とは？】
動物の幸福度を測るためには、様々な側面を考慮する必要があります。
たとえば、動物の身体的な健康状態や行動、心理的なストレスレベル、自然な行動や社会的なニーズが含まれます。これらの指標を定量化することで、動物たちの幸福度を客観的に評価することが可能となります。
【アニマルウェルフェアのための国際的な基準と規則】
アニマルウェルフェアを向上させるためには、国際的な基準と規則が重要な役割を果たしています。
「国際獣疫事務局／世界動物保健機関（略称：OIE／WOAH）」（※）など、様々な組織がアニマルウェルフェアの向上を促進するためのガイドラインを提供しています。これらの基準は、農場やペットの飼育、野生動物の保護など、さまざまな分野で適用されています。
※農林水産省HPより：
国際獣疫事務局はフランス語で「Office International des Epizooties」（略称：OIE）ですが、2003年には、通称として「World Organisation for Animal Health」（世界動物保健機関）を使用することが決まりました。また、略称については、2003年以降も「OIE」が使用されていましたが、2022年に通称の略称として「WOAH」を使用することが決まりました。
なお、「WOAH」は通称の略称に相当し、法的名称の略称は引き続き「OIE」であることから、原則として、当省HP等においては「OIE」と表記しています。
現代の畜産業の課題とアニマルウェルフェアの関係
現代の畜産業は、高い需要に応えるために効率化や大量生産が進み、動物たちの福祉に対する懸念が高まっています。
狭いスペースや不適切な飼育環境、ストレスを与える飼料や過酷な取り扱いなど、これらの要因が動物の幸福度に影響を及ぼしています。アニマルウェルフェアの観点からは、畜産業における改善が必要不可欠となっています。
【畜産業における改善の取り組み】
近年では、SDGsの広まりもあり、アニマルウェルフェアに対する意識が高まり、畜産業界でも改善に向けた取り組みが進んでいます。
より広いスペースの提供、自然な行動が可能な環境の設計、ストレスを軽減するケアの改善など、動物たちの幸福度を考慮した施策が増えてきています。
さらに、一部の生産者や農場はアニマルウェルフェアを重視した経営に取り組んでいます。こうした事例では、動物の健康を最優先に考えた飼育方法や、消費者との透明性を重視した取り組みが評価されています。
とはいえ、残念ながらこれらの改善対策はまだまだごく一部の生産者の範囲にとどまっています。現状では、課題が多く残っているのが現実なのです。
ペットのアニマルウェルフェア
私たちの生活に欠かせない存在となったペットたち。彼らが幸せで健康的に暮らすことは、飼い主としての責任です。
ペットのアニマルウェルフェアを向上させるため、たとえば適切な栄養バランスの食事を提供し、適度な運動をさせることで心身の健康管理をしてあげましょう！
また、十分な水の供給や安全な居住空間の提供、適切な社会化を行うことで、ペットたちの幸福度を高めることができます。
【ペットの行動と幸福度の関係】
ペットの行動は、彼らの幸福度や健康状態を示す重要なポイントに。
たとえば、元気に遊ぶ姿や社交的な行動は、ペットが幸福な状態であることを示すサインとなります。一方で、無関心や怯えた様子は、ストレスや不安を感じている可能性を示す場合があります。
ペットの行動を観察し、普段と異なる態度や行動には適切な対応をして、彼らがストレスを感じないような環境づくりを心掛けてくださいね。
野生動物の保護とアニマルウェルフェアの役割
野生動物の保護は、生態系のバランスを保つだけでなく、アニマルウェルフェアにとっても重要な役割を果たしています。
野生動物の生息地の破壊や違法な密猟によって、野生動物の生存が脅かされています。アニマルウェルフェアの観点からは、野生動物たちが自然な環境で健康的に生活することが大切です。
保護区や野生動物の保護活動は、野生動物の幸福度を向上させるために欠かせない要素となっています！
【人間の活動と野生動物の幸福度への影響】
人間の活動は、野生動物たちの生活に大きな影響を与えています。
たとえば、都市化や農地の拡大によって生息地が減少し、交通事故や汚染などが野生動物にとっての脅威に。また、観光やエンターテイメント産業においても、野生動物の不適切な扱いが問題となっています。
これらの人間の活動が、野生動物の幸福度や福祉に与える影響を理解し、適切な対策を取ることが重要なのです。
【補足情報：5つの自由】
アニマルウェルフェアにおいて、重要な概念として知られている「5つの自由」は、動物の福祉を向上させるための指針として広く受け入れられています。
以下に、「5つの自由」の内容を簡単に説明します。
１．飢えと渇きからの自由 (Freedom from Hunger and Thirst): 動物は適切な量の食事と水を供給される権利があります。十分な栄養を与えられず、渇きを感じている動物はストレスを抱えることになります。
２．不適切な環境からの自由 (Freedom from Discomfort): 動物は適切な環境を提供される権利があります。極端な温度、不適切な飼育スペースなどの環境は、動物の幸福度に悪影響を与えます。
３．痛み、傷害、疾病からの自由 (Freedom from Pain, Injury, or Disease): 動物は苦痛や傷害から守られる権利があります。不適切な扱い、過度のストレス、感染症などの疾病は動物の健康を脅かします。
４．自然な行動をするための自由 (Freedom to Express Normal Behavior): 動物は自然な行動をする権利があります。適切な運動や社会的な交流など、本能に基づく行動をすることが重要です。
５．恐怖と苦痛からの自由 (Freedom from Fear and Distress): 動物は恐怖や苦痛から解放される権利があります。過度のストレスや不安は動物の心の健康に悪影響を及ぼします。
日本におけるアニマルウェルフェアを改善するためには、個人の意識と行動だけでなく、政府や自治体、企業、団体などが連携し、継続的な取り組みが必要なのです。
アニマルウェルフェアを考慮したエシカルな消費行動とは？
では、一般の生活者はアニマルウェルフェアに対してどのようなことができるのでしょうか。その答えとして、エシカル消費が挙げられます。
エシカル消費――つまり私たち生活者が商品やサービスを選ぶ際に、アニマルウェルフェアを考慮したエシカル（倫理的）な消費行動を心掛けることは欠かせません！
たとえば食品や衣料品、化粧品などの製品を選ぶ際には、動物たちの幸福度を尊重するために、動物実験を行っていないか、フェアトレードの認証を受けているか、サステナブルな素材を使用しているかなどを確認しましょう。
また、ペットの飼育においても、できるだけ保護団体や動物愛護施設からの譲渡を検討するなど、倫理的な視点からの消費行動がアニマルウェルフェアに貢献します。
■エシカル消費についてはこちら
『エシカル消費とは？重要な理由と未来への展望について』
【アニマルウェルフェアをサポートする団体や運動に参加する方法】
アニマルウェルフェアを支援するためには、地域のアニマルウェルフェアをサポートする団体や運動に参加することも有効です！
ボランティア活動や寄付、啓発活動など、できる範囲で参加することで、地域社会や国際的なレベルでアニマルウェルフェアを向上させるための活動に貢献できます。
また、SNSなどのオンラインプラットフォームを活用して、アニマルウェルフェアに関する情報をシェアすることで、多くの人々に意識を広げることもできます。
今後のアニマルウェルフェアに向けた取り組みと課題
アニマルウェルフェアの向上は、私たちの社会において永続的な課題として残されています。
今後のアニマルウェルフェアに向けた取り組みとして、まずはより厳格な法律や規制の制定が必要です。国際的な標準となるアニマルウェルフェアの基準を確立し、その遵守を徹底することで、動物たちの幸福度をより確保することができるはずです。
また、教育と啓発活動も重要であり、若い世代にアニマルウェルフェアの重要性を理解してもらうことで、将来の動物保護への意識を高めることができます。
【個人と社会の責任を持ってアニマルウェルフェアを進める方法】
アニマルウェルフェアの向上には、個人と社会全体の責任が求められます。個人としては、ペットの飼育やさまざまな商品の購入を通じて、アニマルウェルフェアを意識したエシカルな消費行動を取ることが重要です。
また、動物に対する虐待や違法行為を見過ごさず、適切な機関に報告することも責任のひとつ。社会全体としては、アニマルウェルフェアを重視する法律や制度の整備、保護団体や研究機関への支援や協力などが必要です。
私たち一人ひとりの意識と行動がアニマルウェルフェアに直結し、より良い未来の実現に向けて重要な役割を果たします。
アニマルウェルフェアの大切さを理解しよう！
動物たちは、感情を持ち、苦しみを感じる存在です。一人ひとりが日々の食品や製品を選ぶ際に、アニマルウェルフェアを考慮することで、彼らの幸福度や福祉を尊重し、より倫理的な消費行動を実践できます。
また、ペットの飼育や野生動物の保護においても、アニマルウェルフェアを意識した適切なケアを提供することが重要です。私たちが持つ責任と意識が、動物たちの幸福な未来を創り出す鍵となるのです！
未来の世代がより持続可能で優しい世界を継承するためにも、現代を生きる私たちの取り組みが大切な役割を果たします。小さなことから積み重ねることで、アニマルウェルフェアへの理解と意識を広めていきましょう。
【参考文献・WEBサイト】
一般社団法人アニマルウェルフェア畜産協会公式サイト https://animalwelfare.jp/
Animal Welfare Food Community Japan公式サイト https://awfc.jp/
農林水産省公式サイト “アニマルウェルフェアについて” 各資料https://www.maff.go.jp/j/chikusan/sinko/animal_welfare.html
『世界動物保健機関OIEの世界家畜福祉ガイドライン策定の現状』https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010752029.pdf , 発行年月：2008年1月
■「クルエルティーフリー（動物実験廃止・禁止）」について詳しくはこちら
『クルエルティーフリーとは？動物実験が化粧品に行われる？世界的な動物実験禁止の動きと日本の現状』
■「エシカル、エシカル消費」について詳しくはこちら
『エシカルとは｜エシカル消費、エシカルファッション、エシカルコンシューマーって何？エシカルの意味を考えよう！
』
■エシカル消費の目印になるレインフォレスト・アライアンス認証について詳しくはこちら
『レインフォレスト・アライアンスとその意義とは？認証製品を選んで持続可能な未来を創り出す一歩に！』
■リジェネラティブ農業についてはこちら
『リジェネラティブ農業とは？サステナブルな未来を築く環境再生型農業について』
■ライフスタイルの主義のひとつ「ミニマリスト」「ミニマリズム」についてはこちら
『ミニマリストとは？エシカル・オーガニック・サステナビリティの観点から解説』
