LIFE 2019.06.04

【マイクロプラスチック汚染・海洋汚染問題】世界が全面禁止を始めたプラスチック製品の弊害

2019年6月4日「プラスチック製レジ袋の無償配布禁止法令の制定予定発表」追記【マイクロビーズ・マイクロプラスチックとは?化粧品にもプラスチックが含まれる?海洋プラスチック憲章とは】プラスチック素材が海洋汚染の原因に!環境汚染から人体への悪影響まで、あまり知られていないプラスチックごみ・ビニール問題についてまとめました。プラスチックの禁止が世界で広まる――世界各国でビニール袋やストローなどプラスチック製品の使用が法律で禁止されるようになってきているんです!

2018年6月にカナダで行われたG7(主要7か国首脳会議)において、日本とアメリカを除く5か国(フランス、イギリス、カナダ、ドイツ、イタリア)が「海洋プラスチック憲章」に同意しました。

※2018年6月時点で、日本は一人あたりの使い捨てプラスチックごみの発生量が「世界第2位」。ちなみに第1位はアメリカ合衆国です(国連環境計画(UNEP)の報告書より)。

海に流れ込むプラスチックごみが現在、どれほど大きな海洋汚染問題を引き起こしており、さらにこのままではプラスチックによる海洋汚染が地球規模での大変な脅威になる推測がされる事実を、このニュースによって初めて知った方は少なくないのではないでしょうか。

海面に漂うプラスチックごみ

そこで質問です――「プラスチック」と聞くと、皆さんはどのようなモノを思い浮かべますか? 

実は日本は、日常生活のなかでプラスチックの使用量が非常に多い国、という意見が海外の方から指摘されています。

確かにたとえばスーパーマーケットやコンビニエンスストアなどでのレジ袋、ペットボトル、お弁当などの容器、お菓子の個別包装、テイクアウトドリンクのフタ、さらにはケーキにも一切ずつ薄いプラスチックシートが巻かれていることが、日本国内ではよくありますよね。

と、このような話をすると、「日本のごみのリサイクル率は世界トップレベルなのだから、文句を言われることはない! 分別も毎日しているのに、文句なら別の国に言ってほしい」と不愉快に思われる方もいらっしゃるかもしれません。

ですがここでは、まだあまり知られていないプラスチックごみ、そしてその中のひとつである「マイクロビーズ」という物質が、どれほどの海洋汚染を引き起こしているのかを簡単にまとめました。「海のごみについてなんて興味ないし関係ない!」と思われている方も、これまで海洋汚染という言葉自体を全く知らなかった方も、なんとなくニュースで聞いたことはあるという方も、ぜひご一読ください!

魚よりもプラスチックごみが多い海

2016年、世界経済フォーラム(World Economic Forum)という国際機関(1971年設立、本部はジュネーブの非営利財団)が次のような衝撃的な発表を行いました。それは

(現状のままプラスチックを消費し続けると)2050年までに、海には(重量換算で)魚よりもプラスチックごみのほうが多くなる

……and given the projected growth in consumption, by 2050 oceans are expected to contain more plastics than fish (by weight), ……

World Economic Forum公式HPより

という内容でした。

海底のペットボトルと魚

ちなみにこの文章に続いて「(2050年までに)消費される石油のうち20%がプラスチックになる」「年間炭素収支は15%になる」という報告が書かれています。

世界自然遺産がプラスチックごみだらけに

同じく世界経済フォーラムのサイト内記事には、南アメリカ大陸の近くにある小さな南太平洋の島「ヘンダーソン島」(Henderson island)が、プラスチックごみの密度が世界一(つまりビーチに所狭しとプラスチックごみが打ち上げられている)となっていることが紹介されています。

そのプラスチックごみの数は、推定3,770万個(総重量およそ17トン)――漁業道具のほか、歯ブラシやペットボトルのキャップなどの生活日常品も多く見られます。

ヘンダーソン島は貴重な動植物が生息している「世界自然遺産」登録されている無人島。ですが海流に乗って運ばれるこれらのプラスチックごみ汚染によって、今や動植物たちの生命は危機に瀕しています。

砂浜に打ち上げられたプラスチックごみ
※上の画像はヘンダーソン島ではありませんが、世界各地の海辺でこのようなプラスチックごみ汚染が広がっています。

このようなプラスチックごみの影響は、当然ながらヘンダーソン島に限ったことではありません。今もまさに世界中の海でプラスチックごみが浮遊し、堆積し、生態系に深刻な悪影響を及ぼしているのです。

太平洋のごみはほぼプラスチック!?

たとえば太平洋を浮流するごみの総計はおよそ79,000トンであり、そのうち99%はプラスチック

そのプラスチックごみの46%漁獲網の一部25%ペットボトルなどのマクロプラスチック、残り29%細かくなったマイクロプラスチック、という研究論文が2018年3月に発表されています。

※出典:Scientific Reports volume 8, Article number: 4666 (2018)

※マイクロプラスチック:1mmよりも小さい顕微鏡サイズのすべてのプラスチック粒子。ただし5mm以下になったプラスチック片は「2次マイクロプラスチック」とも呼ぶ。

ちなみに、たとえばプラスチック製の飲料ボトルが自然に分解されるまでにかかる年数は、およそ450年と言われています。

海洋汚染が人体に悪影響を及ぼす!?

ここまで読み進めて、「海の生物がプラスチックごみのためにケガをしたり死んでしまったりするのは可哀そうだけど、都市部で現代的な生活をしている自分には直接関係ないのでは?」と思う方も、中にはいるかもしれません。

ですがもしも食材に使用されている魚のお腹のなかに小さなプラスチック片が多量に入っているとしたら、もっと身近な問題に感じられませんか?

現実的にこのようなことはすでに起こっており、食物連鎖によって生体濃縮されたプラスチックごみの汚染は、広範囲にわたって引き継がれることになるのです。

当然ながらその食物連鎖には人間も含まれているため、今後どのような影響が人体にまで及ぶのか、懸念されます。

そしてさらに海洋汚染の原因としてクローズアップされているのが、マイクロビーズ(別名「一次マイクロプラスチック」)の存在です。

マイクロビーズ(マイクロプラスチック)ってなに?

マイクロビーズやマイクロプラスチックとは、たとえば洗顔料や歯磨き粉、ボディソープなどの日用生活品に含まれるプラスチックビーズのこと。ごくごく微細なプラスチック製の粒で、目に見えないほど小さなマイクロビーズもあります。

※天然由来・植物性のスクラブもあるため、すべてのスクラブがプラスチック製ではありません。

マイクロビーズ

なお、いかにも粒々しているスクラブだけではなく、シャンプーやヘアカラー、ハンドクリーム、ファンデーション、リップやマスカラ、フェイスパック、ベビーケア製品など、数え切れないほどの肌に密着させるアイテムに、仕上がりを良くするためにマイクロビーズ(つまりプラスチック!)が使用されています。

さらには、ポリエステルといった合成繊維を洗濯した際、大量のマイクロプラスチック(厳密には繊維のため、「マイクロプラスチックファイバー」と呼ばれる)が排出されてもいるのです!

このような微細なマイクロビーズは、排水溝から下水処理場へと運ばれ、取り除くことができなかった一部は海へと流れていきます。

それらのマイクロビーズは吸着した汚染物質とともに海洋生物たちに摂取され、その生態を脅かすことになるのです。

マイクロビーズをはじめとしたプラスチックには、素材そのものの問題とともに、「プラスチックに使われる添加剤の有毒性」も汚染の原因となり、それら有害物質の毒性が生物の体内で溶け出している事例もあります。

※出典:兼廣春之(2016)「洗顔料や歯磨きに含まれる マイクロプラスチック問題」、海ごみシンポジウム(H28.1.23-24)資料

マイクロファイバーの流出を防ぐ洗濯バッグ

アウトドア企業であり、長年環境保全活動などエシカルな取り組みを積極的におこなっている「パタゴニア(patagonia)」では、化繊衣類を保護すると同時に、洗濯によって抜け落ちるマイクロファイバーの川や海への流出を削減する「グッピーフレンド・ウォッシング・バッグ(Guppyfriend Washing Bag)」が販売されています。

グッピーフレンド・ウォッシング・バッグ
※公式サイトより

衣類をこの洗濯バッグに入れて洗濯した後、バッグ内に残ったマイクロファイバーを取り除けば、無防備に環境汚染をすることなく適切に処分できる優れものです。

また、衣類を洗濯中の摩擦から守ってくれるため、余分な繊維の抜け落ちを予防でき、衣類自体の寿命も延びますよ!

※詳細はショップにてご確認ください。

「パタゴニア(patagonia)」内の商品ページ

マイクロビーズへの世界の対応

このマイクロビーズの危険性に世界各国も動き出しています。

たとえば2015年12月末には、アメリカ「マイクロビーズ除去海域法」(Microbead-Free Waters Act)が成立し、2017年7月からはマイクロビーズ入りパーソナルケア製品は製造・輸入禁止、2018年6月には製品の販売自体が全面禁止となりました。

このことから世界シェアを誇る大手企業たちが、プラスチック製のマイクロビーズを植物性のスクラブビーズに切り替えています。

日本のメーカーでは、たとえば花王が2016年末までに、マンダムは2017年末までにマイクロビーズを代替素材に切り替えています。資生堂は2014年4月以降の開発洗顔料にはマイクロビーズを含めず、また2018年末までに既存洗顔料の切り替えを終了するとのこと。

※そのほかのメーカーについては各々の活動報告をご確認ください。

最近ではイギリスが2018年1月に、マイクロビーズを含んだ化粧品・パーソナルケア製品の製造を禁止し、同年7月からは使用された製品の販売も禁じることを公表しています。

EU(欧州連合)もまた、執行機関の欧州委員会を通して2018年1月に、2030年までに使い捨てプラスチック包装をなくし、再利用やリサイクルすることを目指すことを「プラスチック戦略」として公表しています。またマイクロビーズ製品の製造も禁止する方向で動いています。

プラスチック製レジ袋の規制は?

マイクロビーズではなくプラスチック製レジ袋に関しては、アメリカのサンフランシスコなどの州、インド、オーストラリアのコールズベイ、エチオピア、モロッコなどでプラスチック製レジ袋が全面禁止となっています。

エコバッグ

EUでは2010年からイタリアで、2016年からフランスで、法律により全面禁止となっています。

アジアでは、台湾が現在レジ袋の無料提供を全面禁止にし、さらに2030年までにレジ袋を含む使い捨てプラスチック製品を全面禁止にすると打ち出しています。

またデンマークは1993年から「レジ袋製造業者」にレジ袋税をかけて、レジ袋を有料化するなど消費者にコストのしわ寄せが行くことで、結果的にレジ袋使用量を大幅に減少させています。

アイルランドでは2002年に、「消費者」にレジ袋税をかけることで、レジ袋使用量を大幅に減少させています。

その他のEU諸国も、レジ袋の使用量削減に向けての動きを行っています。

日本におけるプラスチックによる海洋汚染対策は?

日本では経済産業省がマイクロビーズを含むプラスチックによる環境汚染問題について調査をしているものの、具体的な法規制はいまだ存在しない状態です。

【追記1】2018年6月15日マイクロビーズ使用抑制を求める改正案が制定

2018年6月15日に既存の「海岸漂着物処理推進法」を改正した、マイクロビーズ使用抑制を求める改正案「美しく豊かな自然を保護するための海岸における良好な景観及び環境並びに海洋環境の保全に係る海岸漂着物等の処理等の推進に関する法律」が制定されました。

これは「製造・販売禁止」ではなく、あくまで事業者(メーカーなど)に責務として「公共の水域又は海域に排出される製品へのマイクロプラスチックの使用の抑制に努めるとともに、廃プラスチック類の排出が抑制されるよう努めなければならないこと」を明記しています。

■環境省「プラスチックを取り巻く国内外の状況」(平成30年8月版)

【追記2】2019年6月3日プラスチック製レジ袋の無償配布禁止法令の制定予定発表

2019年6月3日、環境省は来年2020年までに「プラスチック製レジ袋の無償配布を禁止する法令」の制定を行うと正式に発表しました!

この法令は、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、ドラッグストア、百貨店などで現在無償配布されているプラスチック製レジ袋を、今後は「すべて有料化」することで、プラスチック製レジ袋の利用者を減らし、世界的に問題になっているプラスチックごみ問題・プラスチック汚染に対処する、というもの。

なお、このプラスチック製レジ袋による収益は、できるだけ環境対策にあてるように求める、とのことです。

前日5月31日には「プラスチック資源循環戦略」が策定されており、この戦略と合わせての具体的なプラスチック汚染対策として、日本政府も(一部のエコ意識の高い人たちに向けてだけではなく)一般消費者に目に見える形で(諸外国からかなり遅れを取っているとはいえ)動き出した、と言えそうです。

※「プラスチック資源循環戦略」とは:第四次循環型社会形成推進基本計画を踏まえ、資源・廃棄物制約、海洋プラスチックごみ問題、地球温暖化、アジア各国による廃棄物の輸入規制等の幅広い課題に対応するため、3R+Renewable(再生可能資源への代替)を基本原則としたプラスチックの資源循環を総合的に推進するための戦略 
環境省HPより)

エコバッグを持つ女性

マイクロビーズってどうすれば分かるの?

マイクロビーズは成分名では「コポリマー」「ポリエチレン末」「ポリプロピレン」などと表記されています。

しかし大変なことに、マイクロビーズはメーカーごとに表記される名称が異なるのです!

そのためすべての名称を覚えるのはまず無理なため、目安として頭に「ポリ」(Poly)とついていればマイクロビーズだと判断してください。

英語のサイトですが、“Beat The Micro Bead”というサイトでは、どのような製品にマイクロビーズが配合されているのかが分かるプロダクトリストが掲載されています。

海外の製品を購入・使用される場合は、このサイトのリストをチェックしてみてはいかがでしょうか。

また、同サイト内の “Look for the Zero” というページでは、マイクロビーズを全く使用していないメーカーやブランドのロゴが並んでいます。日本でもおなじみのブランドもいくつか見られるため、ご参考にされることをオススメします。

国ではなく自分自身ができること

フランスでは2020年1月から、使い捨てプラスチック製カップやお皿などの食器が全面禁止されます(ただしこの法案が制定された2016年、欧州の食器メーカー業界団体がフランスに対して法的処置を検討すると発表していました)。

さらに2018年5月には、EUがストローや食器類、綿棒などの使い捨てプラスチック製品の禁止と、2025年までにプラスチックボトルの9割回収を目指す提案を公表しています。

マイクロビーズを含むプラスチック製品に関する世界的な規制の動きは、それほどまでに生態系の悪影響が深刻化している表れでもあります。

冒頭で述べたように、日本とアメリカが「海洋プラスチック憲章」を拒否したことは、様々な政治的・経済的な思惑があってのことと推測でき、すぐに政府が新たな動きを示すとは思えません。

ですが個人個人がマイクロビーズ使用の製品を使用しない、プラスチック製レジ袋を使用しない、など、身近なところから自己判断で行動を起こすことで、大きな社会の動きが生まれる可能性は否めないのではないでしょうか?

プラスチック網が絡まっているアザラシ

ビニール袋やプラスチック素材を飲みこんで苦しみながら死んでいく海洋生物たち、知らずにプラスチック素材を肌に塗り込んでいたり、毒性物質を抱えた魚介類を食している我々人間たち――自分自身や家族の未来を考えることが、他の生物や地球環境全体の問題を改善することになると認識し、身近な第一歩からサステナブル(持続可能)な環境づくりを行っていきませんか。