界面活性剤は化粧品からシャンプー、洗剤まで、日常生活のさまざまな場面で使われることが多い成分です。しかし、すべての界面活性剤が同じように作られているわけではありません。
特に、エシカルかつサステナブルな選択をする際には、どの界面活性剤が環境に負荷を与えにくいかが重要なポイントとなります。
そこでここでは、化粧品や洗剤に含まれる界面活性剤がどのように環境や健康に影響を与えるのか、エシカルな選択とは何か、オーガニックやサステナビリティにどう配慮すればよいかなど、ご説明していきます。
「界面活性剤」という言葉は知っているものの、いまいちどのような作用をする成分なのか、界面活性剤の中でもどのような種類のものに注意すればよいのか分からない……、という方は、ぜひご一読ください。
Contents
界面活性剤とは?
界面活性剤は、水と油を結合させる特性を持つ(親水性と親油性を持つ)物質のこと。この界面活性剤の性質によって、洗剤や化粧品などに利用されています。
たとえば洗剤では、油汚れを水に浮かせて除去する役割を果たし、化粧品では水分と油分を均一に混ぜることで、肌に滑らかに広がるようにする効果があります。
この界面活性剤の原理は、実はマヨネーズ作りにも生かされています。卵黄に含まれるレシチンは自然界に存在する界面活性剤で、このレシチンの働きによって油と酢がしっかりと混ぜ合わさり、マヨネーズの状態が安定するのです。これを、界面活性剤の「乳化作用」といいます。
その他にも、大豆レシチン、牛乳のカゼインなど、自然界にも界面活性剤は多く存在し、食品からエコフレンドリーな洗剤、自然な化粧品に至るまで、幅広く活用されています。
しかし、すべての界面活性剤が人体や環境に安全であるわけではありません。そこで次に、一般的に洗剤などに使用されている界面活性剤について見ていきましょう。
界面活性剤の種類とそれぞれの問題点
界面活性剤は、大きく「天然界面活性剤」と「合成界面活性剤」の2つに分類されます。
【天然界面活性剤】
天然界面活性剤とは、その名の通り、自然界に存在する成分を基にした界面活性剤です。多くの場合、植物や動物の抽出物、果物の皮、果汁、さらには牛乳や卵黄に含まれる成分などが用いられます。
これらは自然界にそのまま存在するため、生分解性が高く、環境への影響が非常に低いとされています。
さらに、天然界面活性剤は人体に対しても一般的に優れた適性を持つとされています。合成界面活性剤に比べて皮膚への刺激が少ない傾向にあり、アレルギー反応を引き起こす可能性も低いと言われています。
しかし、天然成分であるからといって、全ての人にとって安全、というわけではありません。例えば、特定の植物にアレルギーがある場合、その植物由来の界面活性剤が使われている製品は避けるべきです。また、中には洗浄力が低いものもあり、また比較的価格が高い、という点もあります。
ちなみに「石けん」は、天然油脂とアルカリが主な原料の、界面活性剤の一種。ですが、人工的に作られているため「天然界面活性剤」ではありません。また、以下の「合成界面活性剤」にも含まれません。
【合成界面活性剤】
合成界面活性剤は化学合成によって作られ、洗浄力が高いものが多くあり、約2,000種類あると言われています。
これらはさらに「天然系合成界面活性剤」と「石油系合成界面活性剤」に分けられ、天然系はココヤシやアブラヤシなどの天然原料から作られており、石油系は石油から作られています(※)。
※合成界面活性剤は、さらに細かくは、原料によって「アミノ酸系」「脂肪酸エステル系」「高級アルコール系」「石油系」などに分けられますが、ここでは省きます。
石油系の場合、生分解性が低いとされ、環境への影響が懸念されます。また、一部の合成界面活性剤は皮膚に対する刺激性が報告されており、人体への影響も懸念されています。
各タイプの界面活性剤はそれぞれ特有の長所と短所があり、用途や目的に応じて選ぶ必要があります。特に、エシカルや環境的な観点から選ぶ際には、これらの特性と問題点を理解して選ぶことがポイントになります。
■石油系界面活性剤の代表例■
●ラウリル硫酸ナトリウム(SLS: Sodium Lauryl Sulfate): シャンプー、歯磨き粉、洗剤など多くの製品に使用される。
●ラウレス硫酸ナトリウム(SLES: Sodium Laureth Sulfate): SLSよりも刺激性が低いとされ、様々な洗浄剤や化粧品に用いられる。
●直鎖アルキルベンゼンスルホン酸および塩(LAS: Linear Alkylbenzene Sulfonate): 洗剤、特に洗濯洗剤によく使われる。
●ポリオキシエチレンアルキルエーテル(AES: Alkyl Ether Sulfate): シャンプー、バス用品、食器用洗剤などに使用される。
※PRTR法(化学物質排出移動量届出制度)によって、有害性の選定基準に基づき有害性があり環境を汚染している第1種指定化学物質を354種指定した内、以下の6種類の合成洗剤成分が含まれています。
・直鎖アルキルベンゼンスルホン酸および塩(LAS)
・N,N-ジメチルラウリルアミン=N-オキシド(AO)
・ビス水素化牛脂ジメチルアンモニウムクロライド(DAC)
・ポリオキシエチレンアルキルエーテル(AE)
・ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル(OPE)
・ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(NPE)
【注意点】
繰り返しますが、すべての合成界面活性剤、または石油系界面活性剤において問題が指摘されている訳ではありません。
たとえばポリオキシエチレンアルキルエーテル(AES)について、日本石鹸洗剤工業会のレポート『ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩 (AES)のヒト健康影響と環境影響に関するリスク評価結果について』(2011年12月)では、ヒト健康、環境影響について「リスクが低い」とされています。
ですが、一般の方がすべての界面活性剤に関して知識をためておくのは、現実的ではないでしょう。そのため、分かりやすく「石油系界面活性剤を使用していない」ことを目安に製品を選ぶことは、リスク回避のひとつの方法として覚えておくことをおすすめします。
サステナビリティを踏まえた界面活性剤の選び方
製品に配合されている界面活性剤がサステナビリティにどのように寄与するのか、そのポイントを知ることは重要です。以下に、(具体的な成分のリスクが不明な場合の)選び方のポイントを挙げます。
【認証マーク】
「USDA Organic」や「ECOCERT(エコサート)」などの認証マークがある場合、その製品は特定の環境や健康基準を満たしていると第三者機関にて認定されています。
特に、このような認証は製品が持つオーガニック成分の比率や、環境に与える影響、動物福祉(動物実験をしていない、など)に至るまで多岐にわたる基準をクリアしているケースが多いでしょう。
【透明性とトレーサビリティ】
製品の透明性は、その製品がどのように作られているのか、原料はどこからきているのか、といった情報が容易に得られるかどうかを意味します。企業が供給チェーンの透明性を確保している場合、それは一般的にその製品がより信頼できると評価されます。
トレーサビリティは、製品がどのような過程を経て完成したのかを追跡できる能力を指します。これは、原料の供給源が持続可能であるか、製造過程でのエシカルな問題がないか確認するために非常に重要です。
難しいようですが、つまりは、どのようなエシカルな姿勢・観点で作られた製品か、企業やブランドの公式サイトなどできちんと確認するステップを惜しまないようにしましょう、ということです。
楽しく意識的に界面活性剤の種類をチェックしましょう!
界面活性剤は広く利用されていますが、成分によっては環境や健康への影響も無視できない現実があります。そのため、人と環境に優しく、サステナビリティを重視した成分使用は、今後ますます重要になるでしょう。
一般消費者である私たちが、製品に配合されている界面活性剤の種類を気にするなど、少しずつでも意識的な選択をすることは、より持続可能でエシカルな生活が当たり前のこととして広まるようになります。
あなたやご家族などの健康と、私たちが住むこの美しい地球の未来のために、界面活性剤の種類に気をつけつつ日用品を選びましょう!
【参考サイト】
・特定非営利活動法人日本アトピー協会 公式サイト
・日本石鹸洗剤工業会のレポート『ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩 (AES)のヒト健康影響と環境影響に関するリスク評価結果について』(2011年12月)
・福岡県保健環境研究所年報第42号,80-85,2015、『家庭用洗剤の直鎖アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩(LAS)含有量と排出原単位に関する検討』
・環境省『PRTR制度とは』
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