【グルテンフリーってどういう意味?グルテンを摂取しない食生活で健康になるの?】プロテニスプレーヤーのノバク・ジョコビッチ選手の著書などによって広まったグルテンフリー食事療法。今更聞けないグルテンフリー基本情報。グルテンとはなに?グルテンフリー食材で心身が健康になるって本当?など、グルテンフリー食生活に関する疑問・メリット・デメリットについてまとめました。
数年前から頻繁に聞くようになった感のある「グルテンフリー」。いまや日常的に実践されている方が珍しくない、食事療法のひとつです。
(日本では)2015年に発売された、プロテニスプレーヤーのノバク・ジョコビッチ選手の著書『ジョコビッチの生まれ変わる食事』で、「グルテンフリー」という言葉を知った方は多いかもしれません。
というのもこの著書により、ジョコビッチ選手がグルテンフリーの食生活によって心身ともに上向きとなった(結果的に世界ランキング1位になっていることは周知の事実ですよね。2018年もウインブルドン優勝!)ことが広く知られ、グルテンフリーに対する注目が一気に高まったからです。
さらに有名モデルやセレブたちが美容・ダイエット方法としてグルテンフリーを紹介したことにより、ジョコビッチ選手の著書とともに、アメリカをはじめとした世界各国でグルテンフリーは爆発的な人気となりました。
たしかにインターネット上の記事においても、「グルテンフリーで健康的な生活が手に入った」というような内容は良く見られます。またグルテンフリー関連の本のレビューにおいても、グルテンフリーを実践したことによるメリットが多く書かれています。
ですがこれらグルテンフリーのメリットを挙げた記事や本が人気の反面、医師によるグルテンフリーのデメリット面も言われるようにもなってきています。
そこでここでは、グルテンとはなにか、またグルテンフリーとはどのような食事療法であり、どのような疾患を持つ方に良い効果が見られるのかを挙げた上で、グルテンフリー食生活の問題点や気を付けてほしい点についてご紹介します。
Contents
グルテンってなに?
まずは「グルテン(gluten)とはなにか?」という基本的な疑問からご説明します!
簡単に言えばグルテン(gluten)とは、「小麦粉に含まれるタンパク質2種に水を加えてこねると出来る物質」のこと。
小麦粉の10%前後にはタンパク質が含まれています。このタンパク質のおよそ85%は「グリアジン」と「グルテニン」というタンパク質が占めており、これらに水を加えてこねると、グリアジンとグルテニンが絡み合って、最終的に「グルテン」になります。
そのため、小麦粉の種類(タンパク質の量やグリアジン、グルテニンの分子構造などが異なる)や加える水の量によって、弾力のある生地になったり、ポロポロした生地になったりするのは、こねることで形成されるグルテンの粘質や弾力が変わってくるからなのです。
※「グルテニン」は弾力性はあるが伸びにくい性質、「グリアジン」が弾力性はないが伸びやすい性質がある。
【グルテンが含まれている食材・食品例】
・小麦 ※「強力粉 ⇒中力粉 ⇒ 薄力粉」の順で含有量が多い。
※大麦・ライ麦:基本的にグルテンは含まれません。ですが製品によっては、製造過程で小麦が含まれることがあるためご注意ください。
※ソラマメ:タンパク質の約30%はグルテニンです。グルテンを含む可能性があるためご注意ください。
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・パン
・うどん
・パスタ類
・クッキー
・クラッカー
・ケーキ
・キャンディー
・シリアル
・スナック菓子
・ビール
・ドレッシング
・ソース
・ケチャップ
・インスタントコーヒー
・しょうゆ、しょうゆを使った食品(「たまり醤油」は小麦を使用していないためフリー)
・味噌(原材料に麦を使用したモノ)
小麦から作られているパンのふっくら感、うどんやパスタのコシやモチモチ感がグルテン由来だということを考えれば、これらの食品には明らかにグルテンが含まれていることはすぐに分かります。
ですがしょうゆやお味噌にまでグルテンが含まれていることは、あまりイメージになかったかもしれませんね。「ビール=麦酒」という点もうっかり忘れがちでは?
このようにグルテンは穀物すべてに含まれているのではなく、基本的には「麦類」(+ソラマメ)と考えて良いかと思います。
■グルテンを含んでいない穀物例:お米、トウモロコシ、大豆、あわ、きび、ジャガイモ など
※最近では「ソルガム」という名称で「高きび」が販売されていることもあります。
しかしこのように分かりやすい食材・食品だけではなく、サプリメントなどの添加物や加工肉のつなぎとしてもグルテンは使用されています。なんと化粧品にも含まれているのは驚きです!
グルテンが原因の疾患
ではどうしてここまで「グルテンフリー人気」を支える、「グルテンを摂取すると心身に問題をきたすリスクがある」という考えが広まったのでしょうか。
確かにグルテンによって、体調不良になる場合があります。これはれっきとした疾患であり、大きく3パターンに分けると「自己免疫系の疾患」「アレルギー系の疾患」「非自己免疫系・非アレルギー系」が挙げられます。
【自己免疫系】
「自己免疫系の疾患」の代表例は「セリアック病」(「シリアック病」とも呼ばれる)。
セリアック病とはグルテンに対して異常な免疫反応を起こすことで、小腸の粘膜に炎症が起こる(上皮細胞の破壊にまで至る)自己免疫系疾患です。
小腸から栄養が吸収できなくなるため、慢性的な腹部の痛みや栄養失調、鉄欠乏貧血、骨粗しょう症、その他心身ともに不調が見られます。
セリアック病患者は約0.7~1%(欧米)と言われており、遺伝的要因が強く影響するとされています。根本的な治療法はないものの、グルテンを完全に摂取しないことで小腸の炎症は回復します。
【アレルギー系の疾患】
「アレルギー系の疾患」の代表例は「グルテン不耐症」(別名「グルテン不耐性」「グルテン過敏症」「非セリアックグルテン感受性」)や「小麦アレルギー」。食品アレルギー(食物アレルギー)の一種と捉えられています。
上述のセリアック病とアレルギー系疾患との違いは、アレルギー系疾患の場合、アレルギー物質に免疫が過剰反応することです。このアレルギー反応によって、心身の様々な箇所で不調が起こります。
グルテンフリー療法の火付け役であるノバク・ジョコビッチ選手はこの「グルテン不耐症」であったため、グルテンフリーの食事療法で心身ともに体調が上向きになったのは納得の結果ですね。
【非自己免疫系・非アレルギー系】
文字通り、「自己免疫系の疾患」でも「アレルギー系の疾患」でもなく、グルテンがなんらかの影響を与えて体調不良になっているケースです。
グルテンフリーはみんなに効果あり?
グルテンフリーの食事療法を実践し、それまでの下痢や便秘、腹痛、頭痛、全身倦怠感、アレルギー、精神的なイライラなどが解消され、体形もすっきりとした、という「グルテンフリー肯定派」の意見は多数見られます。
そのため「そんなにいい事尽くしなら、私もグルテンフリー生活にしてみようかな」と考えるのは当然です。
ですがここで立ち止まって見直して頂きたいのですが、グルテンフリーをして体調が良くなるのは、「元々グルテンによって体調が悪くなる疾患・体質を抱えている」からなのです。
つまり、グルテンを摂取しないことで「グルテンによる弊害を持っていない人」の体調が良くなる、ということはほぼ考えられません。なぜなら現在体調不良であるのなら、それは「グルテンが原因ではない」からです。
とはいえ、病院でどの食品や成分が体に合わないのか検査を受けるのは、よほどの重い症状がない限りは腰が引けてしまいがち。
そこで「もしかするとグルテンが体に合っていないのかも?」という懸念がある場合は、とりあえずまずは2週間ほど、グルテンフリーの生活を送られることをオススメします。
その2週間の間で体調がかなり改善されれば、グルテンフリーの効果があったことはすぐに分かりますよね。
ですがもしもグルテンフリー食生活を送っても、特に体質改善の実感がなければ、「グルテンフリーは体に良いに違いない!」と過剰にグルテンフリーに固執する必要はないでしょう。
特に最近では、グルテンに関する疾患を持っていないにも関わらず妄信する「グルテンフリーブーム」に警鐘を鳴らす医師の意見もいくつか発表されています。
グルテンフリーによるリスクって?
グルテンフリーブームによって、グルテン不耐症などではない人までもグルテンをまったく摂取しなくなるリスクについて、たとえば以下のような内容がアメリカの医師( Dr. Benjamin Lebwohl, コロンビア大学セリアック病センターの臨床研究ディレクター)によってThe New York Times上で2018年1月に発表されています。
【グルテンフリー食生活によるリスク】
1.食物繊維の摂取量の低下による疾患リスクの上昇・・・便秘や腸の不調、(満腹感がなかなか得られないため)食べすぎによるカロリーの過剰摂取、体重増加を招く
2.全粒穀の不摂取による疾患リスクの上昇・・・栄養価の高い全粒穀を摂取すると、心臓病や特定のがん、2型糖尿病、肥満、感染症リスク、呼吸器疾患リスクが軽減されるため
3.グルテンフリー食品に配合される添加物問題・・・グルテンフリーによる食感の悪さを別の添加物によってごまかしている可能性が高い
4.セリアック病検査の妨害リスクの上昇・・・セリアック病かどうか検査する前にグルテンフリー生活にすると、セリアック病による異常が検出できなくなるため
そのため、もしもセリアック病の可能性が疑われる場合は、グルテンフリーの食事療法を行う前に、専門機関にて検査を受けるようにしましょう!
情報は賢く取捨選択して!
グルテンによって体調不良に陥っている場合は、たしかにグルテンフリー食生活は有効であり、ぜひ継続して実践して頂きたく思います。
ですがグルテンが原因の不調ではないにも関わらず、「有名人が出している本に書いてあるから」「友人やネットの口コミでグルテンフリーの評判が良いから」「健康やダイエットに良いと薦めてあるから」という根拠のない理由だけでグルテンフリー食生活を行うなら、グルテンフリーによるリスクをもう一度チェックしてみてはいかがでしょうか。
何事も一過性の情報に流されて「自分の体に合っていない」偏った生活を行っては、健康増進どころではなくなります。
心身に良い効果がありそうな情報は上手に取り込み、気になることは短期間実践をしてみて、実際に良い影響があると実感できたモノだけを賢く取捨選択――そうすれば無理なく心地よく過ごせる「余裕のある人」になれるはず!
小麦粉の代わりに米粉が使用されているパンやパスタなど、グルテンフリーの食品・食材は、今ではかなり増えてきています。グルテンフリーが気になる方は、まずは2週間トライしてみて、体や気持ちの変化を記録しチェックしてみてはいかがでしょうか。
【監修者:青名 慶】
京都四条烏丸パーソナルジムRACINE(ラシーヌ)のパーソナルトレーナー。健康運動実践指導者。オーストラリアに渡航し、フィットネスを学ぶ。体質に合った、リバウンドしにくくなる食事指導を行っている。
■グルテンフリー食品紹介はこちら!
⇒『おすすめグルテンフリー食品8選!オーガニックオートミールや米粉スイーツ・ヌードルブランド紹介』
■「カゼインフリー」についてはこちら
⇒『【食事指導トレーナー監修】カゼインフリーで体調がよくなる!?牛乳成分カゼインで腸に炎症、副腎疲労でアレルギーに!?』
■グルテンフリーのスイーツ紹介はこちら!
⇒『ナチュラル・オーガニックお菓子スイーツブランド19選|ヴィーガンアイス・グルテンフリークッキー・有機チョコでギルトフリー生活!』
■オーガニックプロテインブランドはこちら!
⇒『オーガニックプロテインブランド15選|ヴィーガンや子供も飲める高品質プロテインとプロテインの種類』
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