【2022年6月Terra Madre2022に関する情報を追加更新】スローフードってなに?意味とその意義、世界に広がるスローフード協会についてなど、スローフード関連の基礎知識をまとめました! スローフードにご興味がある方も、はじめてスローフードを知ったという方もぜひご一読ください!
エシカルな生活について考える時、切っても切れないのが「食」の問題。この食にまつわる言葉に「スローフード」(slow food)があります。
ですが「スローフードって聞いたことがあるけど、どういう意味?」「スローフードって『ゆっくり時間をかけて食べる食事』のこと?」「スローフード? 全く知らない」など、残念ながらまだまだスローフードは一般的にはそれほど浸透してしないのが現状です。
そこでここでは、スローフードの意味とその意義、世界に広がるスローフード協会についてなど、スローフード関連の基礎知識をまとめました! スローフードにご興味がある方も、はじめてスローフードを知ったという方も、ぜひご一読ください!
Contents
スローフード誕生のきっかけ
「スローフード」(slow food)とは、1986年イタリア北西部ビエモンテ州ブラという小さな村で生まれた言葉。
きっかけは1986年当時、イタリアのローマ中心部にファストフード店のマクドナルドが出店したことです。
この出来事によって、ブラに住む、食文化雑誌『ゴーラ』の編集者カルロ・ペトリーニ氏とその友人たちがファストフードによるイタリア食文化の崩壊を危惧しました。
そこで「ファストフード」(fast food)に対する言葉として「スローフード」(slow food)という言葉を作ります。その後ブラを拠点に、現在のスローフード協会の前身団体「アルチゴーラ」を発足し、スローフード運動を始めたのです。
※1989年にアルチゴーラは「スローフード国際協会」になり、カルロ・ペトリーニ氏が会長となっています。
スローフードってどういう意味?
ファストフードとは、「ファスト(fast)=早い」という言葉通り、「手早く簡単に調理されて、素早く提供される」食事のこと。
比較的安価で気軽に空腹を満たすことができるため、世界中に広がっているのは周知の事実ですよね。
しかしファストフードには、「食材の生産者や調理者・加工者が不明で、安全性が不透明」「コストパフォーマンス重視の大量生産による人体への影響」など、問題点も多く隠されています。
そのためカルロ・ペトリーニ氏たちは、「生産者によって丁寧に育てられた、その土地土地に適した食材を使った、きちんとした食事」の文化を守り、若年層たちに食文化を引き継いでもらいたく、ファストフードの反対の「スローフード」という語を使うようになったのです。
スローフードとは、単に「時間をかけてゆっくり食事を楽しむ」という意味ではありません。
食材の生産段階からの「手をかける価値」を守り、そのような丁寧に作られた食材を使っての丁寧で健康的な食事をすることで、自分自身の体・生活の質を向上させつつ、その土地が持つ歴史や文化などを再発見し、地球環境にも配慮する、という、地球規模での「エコ・ガストロノミー」(=環境に配慮する美食学)でもあるのです!
スローフード協会って?
現在「スローフード協会」はイタリア(北西部ブラ)を本部の拠点として、世界160か国以上に広まっている国際的なNPO組織です。ちなみにスローフード協会のシンボルマークは「カタツムリ」!
「コンビビウム」(convivium)と呼ばれる支部は世界45か国に渡っておよそ220個存在し、およそ8万人の会員がいます。
「一般社団法人 日本スローフード協会」、通称「スローフード日本」は、スローフード国際本部から正式な承認を受けた国内運営機関として2016年3月に発足。
日本各地にスローフードに関する活動を行う支部があり、スローフードインターナショナル日本事務所との連携で、団体の国際化・活性化を産官学民連携しながら行っています。
またスローフード協会とは別に、「スローフードユースネットワーク」(Slow Food Youth Network)というスローフードの青年団体も2004年から活動をはじめ、今では世界50か国以上に広がっています。
スローフード協会は、「おいしい、きれい、ただしい(Good, Clean, Fair)食べ物をすべての人が享受できるように」をスローガンにして、食の問題を中心とした様々なプロジェクトを行っているのです!
■Good:おいしく健康的
■Clean:環境に負荷をかけない
■Fair:生産者が正当に評価される
テッラ・マードレってなに?
「テッラ・マードレ」(“Terra Madre”「母なる大地」という意味のイタリア語)とは、2004年からスローフード協会が隔年で主催する、食に関する国際的なイベントのこと。イタリアのトレノ市で行われます。
農業、酪農、漁業など食に関する生産者の方やシェフ、研究者、学生、さらには音楽家など幅広く多くの人々が世界中から参加します。
食の関係者たちが一堂に会し、世界規模でのネットワーク形成ができる機会であり、また世界的な食にまつわる問題、さらにはそこから貧困や地球環境など、食から広がる社会問題に対する意見交換などが行われる場でもあります。
「多様性」「持続可能な社会」という、まさにエシカルな思考を食から発展させていくのがスローフード運動であり、その国際的イベントが「テッラ・マードレ」、ということが分かりますね。
とはいえ、難しい話だけをする場ではなく、楽しく世界の食文化を楽しむワークショップなども開かれ、日本からも正しい和食文化を世界に発信するために有名シェフたちが参加したりしています。
また同時に「サローネ・デル・グスト」(“Terra Madre Salone del Gusto”「味の見本市」)も開催され、世界各地の味を楽しむことができます。
※画像はテッラ・マードレ・サローネ・デル・グスト2016の様子です。
※過去にも数回、日本各地で「テッラマードレ・ジャパンプレイベント」が開催されています。
2018年4月14-15日には、「テッラマードレ・ジャパンプレイベント」が沖縄県今帰仁村にて開催されました!
テッラ・マードレ・サローネ・デル・グスト2018開催
【日時】2018年9月20日(木)~24日(月)
【会場】イタリア、トリノ市(屋外での開催で入場料無料! 誰でも出入り自由です!)
【テーマ】Change your Food – あなたの食べ物に変化を
「人々が普段どのように食べているのか、どのように買い物をしているのか、食というものをどう捉えているかということに耳を傾けながら、少しずつの意識改革が日常生活にどのように変化をもたらすことができるのか」というテーマに挑む「味の見本市」です!
テッラ・マードレ・サローネ・デル・グスト2020開催
【日時】2020年10月8日(木)~2021年4月 ※6ヶ月の期間、世界各国での大小イベントやオンライン配信イベントで構成されます。
【会場】オンライン+オフライン
【テーマ】Our Food, Our Planet, Our Future – 私たちの食、地球、未来。
国際本部がオーガナイズするフォーラムなどのコンテンツに、日本から3名の登壇者があります。
詳しくは、一般社団法人日本スローフード協会HPをご覧ください。
※一般社団法人日本スローフード協会HP内「2020年テッラマードレ」ページ
We Feed The Planet 2020開催
【日時】2020年11月21日(土)~22日(日)10:00~18:00
【会場】デザイン・クリエイティブセンター神戸 KIITO(ホール)(兵庫県神戸市中央区小野浜町1-4)
【テーマ】地球を想う、おいしい選択会議
【参加費】入場無料(プログラムにより一部予約制・有料)
【プログラム内容】「TALK & EAT セッション」「生産者や料理人の出店」「TASTE ワークショップ」「展示」
詳しくは、一般社団法人日本スローフード協会HP内の特設サイトをご覧ください。
※一般社団法人日本スローフード協会HP内「We Feed The Planet 2020」ページ
テッラ・マードレ・サローネ・デル・グスト2022開催
【日時】2022年9月22日(木)~2022年9月26日(月)
【会場】オンライン+オフライン
【テーマ】Regeneration -再生-
より良い食の未来のために私たちにできるアクションは何か、食を通してコミュニティを癒し、生態系を回復するには……。
1000以上のプログラムがおこなわれる、サステナブルな食、フードシステムの未来に関する世界最大級の5日間のイベントです!
詳しくは、一般社団法人日本スローフード協会HPをご覧ください。
スローフード・アワードってなに?
「スローフード・アワード」とは、2000年に創設された、スローフード協会主催の国際的な賞のこと。この賞は「食のノーベル賞」とも呼ばれています。
2002年には、武富勝彦さんが日本人初の「スローフード大賞」受賞者となっています。また同時にアジア人初の「審査員特別賞」も受賞!
武富さんは佐賀県で、有明海に植物「葦」(あし)のたい肥を使った循環型農法による古代米生産を行っており、現在はマクロビオティック料理を研究されています。
スローフード協会の活動例
スローフード協会は、そのほかにも以下のような活動を行っています。
・「味の箱舟プロジェクト」(Ark of Taste):世界中で絶滅危機にある食材・食品の保存運動
・「シェフズアライアンス」:味の箱舟登録されている食材や地元食材を使った世界のトップシェフによる料理を届けるプロジェクト
・アフリカ10,000の菜園プロジェクト:アフリカ現地の人々に菜園運営に関する知識・技術を提供し、継続的に支援するプロジェクト
これらはスローフード協会の活動のほんの一例です。
もはや一個人が「食を楽しむ」だけの考え方ではなく、大きく世界を捉え、地球の未来を守るために今できることを今を生きる人間が実践する、という力強いネットワークが、スローフード協会と言えそうです。
先住民族テッラマードレ アジア・環太平洋 in アイヌモシリ 開催情報
【終了していますが、活動情報のひとつとして掲載しております】
【日時】2019年10月11日(金)~14日(月)
【会場】アイヌ文化交流センター サッポロ・ピリカコタン(北海道)
【メインテーマ】先住民族のフードシステム:気候変動と持続可能性
【ホスト】アイヌ女性会議 メノコモシモシ
アイヌの人たちがホスト役となり、アジア・環太平洋地域をはじめとした「全世界の先住民族」を招き、北海道にて開催されるイベント。
先住民族の健康・教育・暮らし・自然、そして文化保全などの問題や課題を、「食」というファインダーを通して学び、意見を交換し合い、話しあっていくそうです!
※詳細、参加申し込みなどは、以下の「一般社団法人日本スローフード協会HP」内専用ページにて、ご覧ください。
⇒『先住民族テッラマードレ アジア・環太平洋 in アイヌモシリ』
まずは身近な食事の見直しから!
「ファストフード」の反対語として生まれた「スローフード」――ですが今では、より大きな意味を担っていることがお分かり頂けたかと思います。
とは言っても、いきなり最初から地域社会のあり方や地球環境について、食から考えて行動に移す、というのはハードルが高そうですよね。
そこでまずは日常の食事内容から見直してみては?
季節に合わせた旬の食材を選んだり、生産者の顔が見えるオーガニック野菜を買ってみたり……。できる範囲から少しずつ変えることで、体も心も伸び伸びとして、今とは違った角度でモノゴトが見られるようになるかもしれませんよ!
■国産のオーガニック野菜・食材の宅配サービスについては、こちらの記事でご紹介しています。
⇒『有機野菜・オーガニック食材の宅配通販おすすめ8選!自宅でおいしく楽しめる国産お試しセット紹介』