世界初・堆肥化できる魚型しょうゆ入れ「Holy Carp!」 南オーストラリア州のデザインスタジオ「Heliograf」が開発

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プラスチック製の使い捨てしょうゆ入れを堆肥可能な素材で新開発
Ethical Leaf 編集部

「魚の形の小さなしょうゆ入れ」と聞くと、おそらく誰もが同じプラスチック容器を思い浮かべるのではないでしょうか。長年、日本でも寿司やお弁当の“定番アイテム”として親しまれてきたあの魚型のしょうゆ入れが、オーストラリアで生まれ変わりました。

シドニーを拠点とするクリエイティブスタジオ「Heliograf(ヘリオグラフ)」は、従来のプラスチック製しょうゆ入れの代替品として、世界初となるプラスチック不使用・家庭用堆肥化可能な魚型のしょうゆ入れを開発。その名は、「Holy Carp! (ホーリーカープ)」です。

プラスチック製の使い捨てしょうゆ入れを堆肥可能な素材で新開発

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1.使い捨て包装がもたらす環境負荷

近年、プラスチック削減への取り組みを導入する国が増えています。国連環境計画(UNEP)の報告によると、世界で生産されるプラスチックの約40%は使い捨て包装が占めているとのこと。小さなプラスチック容器やパッケージでも、使用時間がわずか数分にもかかわらず、環境中では何世紀も分解されずに残り続けます。

便利で可愛らしい小さな魚の形をしたしょうゆ入れも、その一つ。この使い捨て容器は、1954年に株式会社・旭日創業の渡辺輝夫氏によって発明されました。

今、このしょうゆ入れは日本だけでなく、世界中の多くのアジア料理店やテイクアウト店でも定番になっています。

実は、あの容器自体は再利用可能なポリエチレン製。ところが、小ささのため機械による処理が難しく、オーストラリアではリサイクルされずに廃棄されているのです。小さな容器ひとつでも、その積み重ねは海洋生態系に深刻な影響を与えます。

2025年9月1日、南オーストラリア州政府は、従来の見慣れた魚型のしょうゆ入れを禁止することを発表しました。

2.南オーストラリアで始まった“さよならプラスチック製しょうゆ入れ”

南オーストラリア州では、環境保護推進策の一環として、プラスチック製しょうゆ入れが使い捨てプラスチック製品の禁止リストに正式に追加されました。同リストには、ジュースボックス用ストロー、テイクアウト容器のカトラリー、プラスチック製農産物シールも含まれています。

この動きは、日常に根づいた使い捨て文化を見直し、持続可能な素材へ移行する大きな一歩です。

そして、その代替品として生まれたのが、同州のデザインスタジオ「Heliograf(ヘリオグラフ)」が開発した、世界初となる堆肥化できる魚型しょうゆ入れ「Holy Carp(ホーリー・カープ)」です。

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3.Heliografの挑戦──「Holy Carp」とは

Heliografは5年にわたり、プラスチック製しょうゆ入れの環境負荷に注目してきました。代表作のひとつ「Soy Sauce Lamp(醤油ランプ)」で皮肉を込めたメッセージを発信しながら、ついにその代替品として「Holy Carp!」を生み出したのです。

Holy Carp!は、サトウキビ搾りかすを利用したパルプ素材で作られており、使用後は家庭用コンポストで堆肥化できます。さらに、工業デザイン会社「Vert Design」との協力により、店頭で充填できるドロップ容器として設計。

工場で個包装せず、まとめて容器だけ納品することで、包装ごみを大幅に削減し、店舗が必要な分だけ入れることで、食品ロスや廃棄を防ぐ。さらに使い終えた容器は、家庭用コンポストで堆肥化可能に。製造・流通段階の環境負荷を大きく軽減する仕組みです。

 

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見た目は愛らしく、こぼれや漏れにも強い。小さな容器に“持続可能な未来”を詰め込んだようなデザインからは、Heliografの製品への期待が垣間見えます。

また、「Holy Carp!」という名称は、英語のスラング「Holy crap!(なんてこった!)」をもじった言葉。遊び心あふれるネーミングの裏には、私たちが無意識に使ってきた“便利なプラスチック”への驚きと反省が込められているとのこと。

ヘリオグラフのデザイン哲学は「笑いながら考える」。軽やかなユーモアの中に、環境への真剣なメッセージが潜んでいるのです。

 

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4.“小さな一滴”が世界を変える第一歩に

このオーストラリアでの取り組みは、今後世界各地にも広がる可能性があります。日本でもプラスチック削減や代替素材の開発が進むなか、Heliografのようにユーモアと機能性を兼ね備えたデザイン力は、サステナブルな未来をより身近にするのではないでしょうか。

Heliografは、「デザインとは、社会を変えるためのツールそのもの」だと信じています。Holy Carpは、ただの代替素材ではなく、機能性と環境配慮を見事に融合させたアート作品です。その発想は、日常の中にある“当たり前”を見直すヒントを与えてくれます。

小さな醤油の一滴が、未来への意識を変えるきっかけになるかもしれません。

※参照
Heliograf 「Holy Crap! Introducing the first plastic-free, home compostable soy fish dropper.」
株式会社 旭日創業 
Our World in Data 「Packaging is the source of 40% of the planet’s plastic waste」
UN environment program 「Single-use plastics: A roadmap for sustainability」
delicious. 「This Aussie design studio just created a plastic-free alternative to the soy sauce fish」
Trend Watching 「Daily Australian designers develop a compostable alternative to iconic soy sauce fish」


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Ethical Leaf 編集部

エシカルな生活を楽しむライフスタイル・マガジン『Ethical Leaf』(エシカルリーフ)編集部。 「日常のなかでふと気づく誰かのこと、環境のこと、世界のこと、地球のこと」をベースに、生活のなかに取り入れやすい(&心に留めておいてほしい)エシカル(倫理的な)情報を集めて発信中!

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