家庭から出る生ごみを資源に変えるコンポスト。なかでもバッグ型コンポストは、広い庭がなくても置きやすい・軽い・始めやすいことから、都市暮らしの方を中心に注目度が高まっています。
家庭菜園の端に置くようなバケツ型コンポストやキエーロタイプに比べて導入ハードルが低く、バッグという形状も都会暮らしのご家庭にマッチします。
一方で、一般的なコンポストとの違いや、費用感は気になるところ。本記事では、都市部に暮らす家族世帯を前提にした評価軸で選び方を解説し、続けやすい運用のコツもあわせてご紹介します。
目次
選び方のポイント
バッグ型コンポストは、好気性発酵と呼ばれる、酸素を好む微生物の活動によって生ごみ・野菜カスを混ぜて分解させるのが基本。そのため、多くのブランドが通気性や水分コントロールをしやすい生地・設計になっています。
生ごみを小さめに刻んでから投入するといった日々の手入れさえ行えば、においやコバエの発生も抑えられます。
その中でも、ブランドによってサービスの特色があります。以下のポイントに注目して自分に合ったコンポストを選ぶのが良いでしょう。
1)投入できるもの
バッグ型コンポストは、使う「基材」や「サービス形態」によって投入できるものが異なります。
投入できないものが多いと、思ったより生ごみが減らせなかったり、日々の生ごみを「入れる/入れない」で仕分ける手間が増え、続けにくさにつながります。
一般的に、生野菜くず・果物の皮・コーヒーかす・茶殻・少量の卵殻・米ぬかなどは相性がよい一方、肉・魚・油分の多いもの・大量の柑橘の皮・骨・貝殻・アルミホイルなどはNGまたは注意が必要、といった基準が設けられていることが多いです。
バッグ型コンポストでも燻炭をつかうものやコーンスターチを含ものなど、基材の原料が異なるため、購入前に「投入OK/NGリスト」を必ず確認しましょう。
回収サービスがあるブランドだと、回収先で提携農家が二次発酵を行うため、投入できるものの範囲が広がることもあります。
2)伴走サービス・質問のしやすさ
初めての人ほど、悩みどころは“続け方”。運営企業の伴走サポート(説明書の丁寧さ、FAQ、メールやSNSでの質問窓口、ワークショップ、コミュニティ運営など)があるかどうかで、疑問が出たときの不安軽減が大きく変わります。
特にバッグ型は季節や投入物、水分量で分解スピードが上下しやすく、刻み方や混ぜ方、湿度調整といったちょっとしたコツが効果を左右します。
購入前に「問い合わせ手段」「返信速度の目安」「写真で状態を見てもらえるか」まで確認しておくと安心です。
3)回収サービス
できあがった堆肥を「回収してくれるかどうか」は、都市部ユーザーにとって重要なポイントです。
バッグ型コンポストの場合、2-3か月のサイクルで15L程度の堆肥(ホームセンターで販売されている土程度)ができるため、広い家庭菜園や花壇があれば自家消費できますが、そうでない場合は堆肥を持て余してしまいます。自治体によっては堆肥をごみとして出すことができません。
コミュニティ回収・提携農園への受け渡し・自治体連携のリサイクルルートなどを用意しているブランドを利用すれば、運用のハードルを下げてくれます。
回収が無い製品を選ぶ場合は、「どのくらいのペースでどれほどの量ができるのか」「ベランダで保管しておくことができるか」も合わせて検討しておきましょう。
4)ランニングコスト
バッグ型コンポストは、微生物の働きが徐々に弱まるため、基材の追加・交換が必要になります。
つまり、初期費用だけでなく、定期的な基材購入や、回収サービスの送料・手数料がランニングコストとして発生します。
交換サイクルは家族構成に応じた投入量や気温、水分管理の状態によって変動するため一概には言えませんが、「1回の基材でどれくらいの期間/どの程度の量を処理できるか」「追加基材の購入方法(定期購入・都度購入)」「送料込みの実質単価」を比較しておくと長期の総コストを見積もりやすくなります。
初期費用とランニングコストをセットで試算し、無理なく続くコスト感を目安に選びましょう。
おすすめバッグ型コンポスト4選
ここからはLFCコンポスト, ecotasコンポスト, KURKKU FIELDS, Agri Poucherの4ブランドを詳しくご紹介します。比較表に加え、ブランドごとに詳細を整理してみました。ご自分にぴったりのコンポストを見つけてくださいね。
投入 範囲 | 質問 | 回収 | 月額 費用 | |
---|---|---|---|---|
LFC | 〇 食べ残し全般 | ◎ LINE・対面 | △ 要持込・別費用 | 〇 1,298円 |
ecotas | ◎ 貝殻等もOK | 〇 LINE24時間 | ◎ 回収込み | ◎ 1,330円(回収込) |
KURKKU FIELDS | ? 明記なし | △ メールのみ | × 回収なし | △ 1,425円 |
Agri Poucher | ? 明記なし | × なし | × 回収なし | × 2,450円 |
1. LFC(Local Food Cycling)
LFCコンポストは、ローカルフードサイクリング株式会社(Local Food Cycling)が展開する、バッグ型コンポストです。
ローカルフードサイクリングは2019年設立、本社は福岡県に所在し、ボーダレス・ジャパンのグループ事業として「生ごみを資源に変え、循環を日常にする」ことを掲げて全国で普及活動を行っています。
コンポストの販売だけでなく、利用者コミュニティ/講座/回収会など、導入後の“使い続けられる仕組み”まで設計しているのが大きな特徴です。
投入できるもの:〇
公式HPのよくある質問によると、LFCコンポストは人の口に入るものは概ね投入可能となっており、傷んだもの、食べ残し、シンクの生ごみ、野菜・果物くずに加え、卵の殻・魚や肉の骨などの残渣もOK。
使用済み食用油も週に1回100mlまでなら投入可能と明記されています。一方で、貝殻、栗の皮、タケノコ、トウモロコシの皮、雑草・生花は不可です。
公式の目安では、1日あたりの投入目安量は400g程度で、投入期間は約1.5〜2か月、その後約3週間熟成というサイクルになっています。
伴走サービス・質問:◎
同梱される利用ガイド加え、利用中の疑問は、ホームページの「よくある質問」ページやLINEホットラインで個別に相談できます。
さらに、各地で定期的に相談回収会が行われており、現地でスタッフや農家さんかへ相談できる環境が整っています。近くに回収拠点があると、コミュニティで学べる点は初挑戦のユーザーにとって継続の安心材料です。
回収サービス:△
自宅でできた堆肥を堆肥相談&回収会に持っていくと回収してくれる仕組み。対面で相談できる場としては良いものの、回収となるとバッグを持っていかなければならない、週末の限られた時間の受け付け、ということもあり持ち込む方法、日程調整の工夫が必要です。
My LFCファーマーという堆肥を送ってお礼の野菜と交換できる仕組みもありますが、参加費2,900円(税込)で送料は別途自己負担のため、継続的に利用するにはハードルが高いかもしれません。
月額費用:〇
LFCの定期便では初回4,400円(税込)、2回目以降は1,936円(税込)+送料660円。基材の単品購入は2,156円(税込)、コンポストバッグ単品は3,300円(税込)とされています。
目安として1日最大500g投入で1〜3か月稼働→約3週間熟成のサイクルになるため、2か月単位で基材補充する場合、定期便の月額継続コストは1,298円(税込・送料込)となります。
2. ecotasコンポスト
ソーシャルグッド領域の事業を手がけるグリービズ株式会社(設立:2021年10月/本社:東京都杉並区)が、都市生活者向けの回収サービス付きバッグ型コンポストとして展開するのがecotas(エコタス)コンポストです。
関東1都7県でサービスを開始し、限られた生活空間でも続けやすい省スペース設計のバッグと、回収・再資源化まで一気通貫で支援するサービスが特徴。
ブランド公式サイトやSNSから最新情報の発信・問い合わせ窓口も整備されています。
投入できるもの:◎
家庭の一般的な生ごみ(野菜くず・果物の皮・コーヒーかす等)に加えて、「通常のコンポストでは分解しづらい素材」にも対応するのがecotasの強みです。
貝殻、トウモロコシの皮に加え、落ち葉や生花なども投入可能と明記(インスタグラム投稿:投入できるもの/できないもの)されており、回収後に提携農家での二次発酵までを前提に、投入対象を広く設計しています。
都会暮らしで出やすい多様な生ごみにカバー範囲を広げることで、入れ分けの手間・ストレスを抑えやすい点が実用上のメリットです。
伴走サービス・質問:〇
LINE・Instagram・メールによる問い合わせ窓口が案内されており、初回購入のスターターキットにはスタートガイドも同梱されています。
公開情報ベースでは対面型の伴走サービスまでの明記はありませんが、LINEの問い合わせは24時間365日対応かつよくある質問ページも準備されているとのことで、導入時の安心感はありそうです。
回収サービス:◎
2か月ごとの回収サイクルを前提とし、返送用の袋・伝票が同梱されているのがecotasの強みです。使い切れなかった堆肥はそのまま返送し、提携する農家で二次発酵、有機農業へ活用という循環に接続されます。
東京都三鷹にある鴨志田農園と提携し、循環の輪を作っており、ガーデニングの土が不要なご家庭や、自治体のルールで堆肥を廃棄できない地域でも導入しやすい運用設計です。
現在は関東1都7県での運用に限られていますが、関東圏にお住まいの方には有力なオプションです。
月額費用:◎
単品価格の場合はスターターキット:6,380円(税・送料込)、回収サービスつき継続セット:3,410円(税・送料込)です。
定期購入だと、スターターキット:4,980円(税・送料込)、回収サービスつき継続セット:2,660円(税・送料込)。こちらも基本は2か月おきの基材交換となるため、定期購入の場合の月額費用は1,330円。回収費も含めて他社と同じ程度の価格なのがecotasの利点です。
3. KURKKU FIELDS
千葉県木更津に拠点を置く「KURKKU FIELDS(クルックフィールズ)」は、食・アート・農業・エネルギーを横断して“サステナブルな循環”を体験できる「ファーム&パーク」を運営する企業です。
施設内の循環実践から派生した家庭用「コンポストバッグ」を販売しており、日常で出る生ごみを都市部のベランダ等でも小さく回すことを目指した導入しやすい仕様が特徴。
公式リリースや特設ページでは、木更津の畑での循環実践と併せた位置づけが明確です。
投入できるもの:?
公式の製品紹介ではベランダ設置を想定したコンポストとして案内されています。
現時点で投入していい食材の詳細一覧は公開ページに明記されていないため、購入時同梱のガイドまたはサポート窓口での確認が前提です(メール窓口あり)
伴走サービス・質問:△
販売ページに専用の問い合わせメールアドレスが明記されており、運用中の疑問をメールで相談できます。
インスタグラムのアカウントもありますが2022年で運用が停止している様子。FAQは存在せず、問い合わせ手段がメールのみのため、気軽さという観点で△という評価に。
回収サービス:×
KURKKU FIELDSでは地域の未利用資源を活用する取り組みとして、コンポストの原料である米糠を木更津市内の農家から供給してもらっています。
一方で、コンポストにより発生した堆肥を回収・再利用する試みは現時点の公開情報からは確認できていません。
月額費用:△
コンポスト基本セットの価格は3,850円+送料1,000円。コンポスト基材の定期便は1,850円+送料1,000円。
機材は2か月の配送となるため、月額に割り戻した費用は1,425円になります。
4. Agri Poucher
株式会社地球Laboが展開するAgriPoucherは、都市生活と植物のある暮らしを“バッグ一つ”でつなぐことを目指したプロダクトライン。
園芸用の栽培バッグ(アグリポーチ)からスタートし、同じ袋型の思想を活かしてAgriPoucherコンポストをラインナップ。“置き場所を取らない・軽い・始めやすい”を軸に、小さなスペースでも回せるコンパクト設計が特徴です。
投入できるもの:?
公式HPには具体的な可否一覧は現時点で明記されていないため、問い合わせで運用上の可否を確認するのが安全です。
製品ページではコンポストの基本的な投入→撹拌→熟成のプロセスが図解され、1日あたり約300g目安の投入で2-3週間の投入期間を想定する運用が示されています。
伴走サービス・質問:×
使い方に関するYoutubeは紹介されているのですが、運用の疑問に答えてくれるような回答チャネルは見受けられないため×評価に。
回収サービス:×
公式の公開情報では、堆肥の回収サービスに関する案内は確認できません。別売りのアグリポーチも販売されていることから、自家利用(プランター/ベランダ菜園)で使い切る前提の設計と読み取れます。
ランニングコスト:×
初回はAgriPoucherコンポストキット6,600円(税込)+送料800円が基準。
継続運用では「中基材のみ」1,650円(税込)+800円ですが、1回の基材の投入期間目安が3-4週間のため、1か月ごとに交換した場合の月額費用は2,450円となります。
まとめ
バッグ型コンポストは、ごみ処理ではなく暮らしの一部として環境意識を形にできる、最も身近なサステナブルアクションの一つです。
従来の屋外型や電動式に比べて軽く、デザイン性も高く、置き場所を選ばない——そんな“日常に馴染むエコ習慣”として、都市部でも導入する人が増えています。
生ごみをバッグに入れ、混ぜて、回収に出す。
わずかそれだけのステップで、資源がまた「土」へと還る循環が生まれます。家庭単位の小さなアクションが、地域や社会全体の食品ロスの削減・脱炭素につながっていく。バッグ型コンポストの魅力は、まさにこの“目に見える循環”にあります。
ぜひ、自分の暮らしや住環境に合ったブランドを選び、「家庭でできる循環」を日常のルーティンに取り入れてみてください。
ひとつのバッグから、地球にやさしい未来が少しずつ育っていくはずです。