透き通った海、手つかずの自然。そんなイメージを抱かれがちな太平洋の島々で、意外な事実が明らかになりました。2026年1月、学術誌『PLOS One』に掲載された研究によると、フィジー、トンガ、ツバル、バヌアツ周辺で捕獲された沿岸魚の約3分の1に、少なくとも1つのマイクロプラスチック粒子が含まれていたのです。
調査対象は138種、878匹。とくにフィジーでは、実に75%の魚が汚染されていました。一方、バヌアツでは5%にとどまるなど、地域差も鮮明です。
この研究が示したのは、単なる数値ではありません。これまで空白だった太平洋島嶼国周辺の実態を、初めて可視化したという意味を持ちます。「結果は希望でもあり、現実でもあった」。研究者は今回の調査を、そう振り返っています。
汚染を減らせる余地が見えた一方で、マイクロプラスチックはすでに、人里離れた海の生態系にまで入り込んでいる。その現実を、私たちは突きつけられているのです。
なぜ、世界から隔絶された海が汚染されるのか
太平洋島嶼国は、地理的には世界の中心から遠く離れています。けれど、それが「守られている」ことを意味するわけではありません。
急速な都市化に対し、廃棄物や水管理のインフラ整備は十分とは言えない。そこへ、世界各地から海流に乗って流れ着くプラスチックごみが加わります。外から来る汚染と、暮らしの中から生まれる汚染。その両方を受け止めてしまう構造です。
さらに深刻なのは、この地域では魚が主要なタンパク源であること。海洋汚染は環境問題であると同時に、健康と生計の問題でもあります。
「自然が豊かだから大丈夫」。そんな思い込みは、もはや通用しません。遠隔地の海ほど、影響が見えにくく、声が届きにくい。それだけのことなのです。
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洗濯、服、ペットボトル。私たちの生活は海とつながっている
マイクロプラスチックと聞いて、真っ先に思い浮かぶのはペットボトルやレジ袋かもしれません。しかし今回の研究で多く見つかったのは、合成繊維由来の微細な繊維でした。
フリースやポリエステルの服を洗うたび、目に見えないほど細かな繊維が排水として流れ出ます。下水処理施設ですべてを回収できるわけではありません。その一部は川へ、海へ、そして魚の体内へとたどり着きます。
ここで考えてみたいのは、「どうして、この状況が生まれたのか」ということ。それは誰かの過ちというより、便利さを選んできた私たちの暮らしが、少しずつ海へ影響を与えてきました。
太平洋の魚に起きていることは、遠い国の話ではありません。洗濯機の前に立つ、その瞬間から続いている出来事なのです。
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完璧じゃなくていい。小さな選択が、意識を変え、海を変える
マイクロプラスチック問題を前に、「自分に何ができるのだろう」と感じる人は少なくないでしょう。でも、すべてを変える必要はありません。
フリースを毎回洗わず、着用回数を少し増やす。マイボトルを、週に一日だけ持ち歩いてみる。魚を選ぶとき、「どんな海から来たのだろう」と一瞬考えてみる。環境配慮の取り組みを、そっとシェアする。どれも小さな行動です。それでも、意味は確かにあります。
行動とは、消費だけを指すものではありません。関心を持ち、声を上げることも、社会を動かす力になります。完璧である必要はない。今の生活を否定する必要もない。
ただ、知った今、ほんの少しだけ選び方を変えてみる。その積み重ねが、海と私たちの未来をつないでいきます。
今日の洗濯。今日の一杯。あなたは、どこから始めてみますか。
※参照
PHYS ORG「Microplastics found in a third of surveyed fish off the coasts of remote Pacific Islands」
Inside Climate News 「One-Third of Pacific Island Fish Contaminated With Microplastics」
SciTechDaily「Scientists Find Microplastics in Fish From Pristine Pacific Waters」





