毎日のように身につける下着。その一枚が、地球を守る力を秘めているとしたら?
アメリカ・ロサンゼルス発のサステナブルブランド「KENT(ケント)」は、“堆肥化可能な下着”という革新的なアイデアで、ファッションと環境の調和を目指しています。この記事では、KENTの理念や製品のこだわり、そして「土に還る」ものづくりの背景を紐解きます。
ファッション業界に潜む「見えない廃棄物」
ファッション業界は、世界で最も廃棄物を生み出す産業のひとつです。毎年およそ9,200万トンの衣類が廃棄されており、そのうち約7割以上が埋立または焼却処分されると言われています。下着も例外ではなく、寿命が短さから大量廃棄の一因になっています。
さらに、多くの下着にはナイロンやエラスタンといった化石燃料由来の素材が使われ、洗濯のたびにマイクロプラスチックを排出。やがてそれらは分解されることなく、海や土壌に蓄積していくのです。
この問題に真っ向から挑んだのが、KENTの創業者ステイシー・グレース氏。彼女は「ファッションが環境破壊に加担する必要はない」という信念のもと、自然に還る下着づくりをスタートさせました。
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「土に還る」KENTの下着
KENTの最大の特徴は、使い終わったあとに堆肥化できること。
2020年以降、同社はすでに1万7,500枚以上の下着を販売し、そのすべてが家庭用コンポストで約90日以内に分解され、土へと還ります。これは、KENTが掲げている「Plant Your Pants(パンツを植える)」というビジョンです。
すべての製品には、国際的なオーガニック認証「GOTS(Global Organic Textile Standard)」を取得した100%オーガニック・スーピマコットンを使用。合成繊維や化学染料、有害物質は一切不使用で、ビーガン仕様・プラスチックフリーを徹底しています。
家庭に堆肥化容器がない場合でも、KENTや「The Big Favorite」などの回収プログラムを通じて再資源化が可能。約16〜32ドル(約2,460~4,920円)の下着が糸へと再生され、新たな命を吹き込まれます。
さらに、製造・流通の各工程でも環境配慮が徹底されています。パッケージは再生紙製、配送はカーボンニュートラル。まさに“地球に負担をかけない”デザインが細部まで息づいているのです。
終わりまでデザインするという哲学で、着心地と美しさに妥協なし
KENTの下着は環境に優しいだけではありません。オーガニックコットン特有の柔らかさと通気性が、肌をやさしく包み込みます。そのミニマルで洗練されたデザインは、どんなファッションにも自然になじみ、日常をより心地よいものにしてくれます。
ユーザーからは「肌への刺激が少ない」「長く愛用できる」といった声が多く寄せられ、機能性と美しさを両立するエシカルブランドとして高く評価されています。
KENTの核にあるのは、“Design for the End(終わりまでデザインする)”という思想。
それは、製品が作られ、使われ、そして廃棄される最後の瞬間まで責任を持つという考え方です。単なる「エコ」ではなく、ライフサイクル全体を見据えたデザイン。この理念のもと、KENTは下着という日常的なアイテムを通じて、循環可能な暮らし方を提案しています。
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小さな選択が、未来を変える一歩に
KENTの下着は、単なるファッションではありません。それは、持続可能な未来への小さな約束。たった一枚の下着を選ぶことで、地球に優しい選択を実現できる。
ファッションの力で世界を変える──KENTはその信念を胸に、今日も“新しい美しさ”を世界に問いかけています。
※価格は記事執筆時点のレート換算です
※参照
KENT 「organic, plastic-free underwear」
UN environment programme 「Unsustainable fashion and textiles in focus for International Day of Zero Waste 2025」
Business Waiste 「Fashion Waste Facts and Statistics」










