サステナビリティにこだわった日本製のバッグ「FUMIKODA」(フミコダ)のバッグを生み出した幸田フミさん。
未経験でIT畑からの転身という異色の経歴ながら、ブランドは今や「出世バッグ」として愛されるまでに成長。
Ethical Leafのエシカル・サステナブルバッグ日本海外ブランド13選でもご紹介した、ファーストレディーや芸能人もが支持するブランドのストーリーを伺いました。
「欲しいバッグが無いからつくる」IT畑からの転身
提供:FUMIKODA
――サステナビリティとデザイン、機能性を両立したラグジュアリーで人気のFUMIKODAさんのバッグは、幸田さんのお名前をブランド名にされていていますよね。サステナブルが意識される前から多くの女性の心をつかんでいますが、どういった経緯で誕生したのでしょうか?
幸田フミさん(以下、幸田さん):元々、私はIT関係の出身で、毎日仕事で使える大容量のバッグを探していました。
当時子育てもしていたので、仕事で使えるデザインと容量でありながら、子育てでも使える雨にも強いタフなバッグが欲しかったんです。
でも、どれだけ探しても納得のいくものが見つからなかったので「欲しいバッグが無いなら、自分でつくろう」と思って、2016年にFUMIKODAを創業しました。
――「自分でつくる」とはすごい選択肢ですね!あるもので間に合わせるのではなく、ゼロからものづくりをされる姿勢が素晴らしいです。
幸田さん:でも、つくり始めてすぐにファッション業界の労働者の人権問題や製造工程での環境負荷の大きさを知ってショックを受けました。
そこで何かを犠牲にするのではなく「自分が持っていて気持ちがいいバッグ」をつくろうと決めました。
それが、FUMIKODAの特長でもある、サステナブルな素材や日本製というものづくりに繋がっています。
――サステナブル素材は、どういったものでしょうか?
幸田さん:FUMIKODAで採用しているのは耐久性に優れた雨の日も使えるFUMITEX®というオリジナルの人工皮革や、徳島県の放置竹林や青森産のりんごジュースの搾りかすなど廃棄されるものや自然由来の素材からつくったバイオマス素材を使用した人工皮革などです。
バッグを長く使ってもらうことで廃棄を減らすことも重要だと考えているので、耐久性も重視しました。
女性のさまざまなお悩みに応えられるように、機能性はもちろん、デザインや快適さなども両立しています。
「興味」と「使命感」が活動の原点
提供:FUMIKODA
――女性は荷物が多くなりがちなので、とても喜ばれるバッグですよね。バッグづくりはいつ頃から、どのように始められたのですか?
幸田さん:本業のITの仕事をしながら、余った時間をバッグづくりに充てていました。
思うようにいかないことがあったり、実際にお金もたくさんかかったり。
途中で「これ、私がやる仕事じゃないのかも」と思ったこともあるのですが、それでも納得するバッグは無いままで、誰かがやらなきゃいけない。
周りにはピッタリのバッグを探している女性がたくさんいて、社会的使命も感じていたので「じゃ、やっぱり私がやらなきゃ」と。
本業があったことや周りからの応援があって、何とか続けることができました。
――葛藤がありながらも、ニーズや使命感が幸田さんをバッグづくりへ導いてくれたのですね。
幸田さん:バッグづくりを始めるまでは環境や動物への負荷を知らずにいたので、何かを購入するときに消費者として「これが何からできているか」は知らないとダメだなと痛感しましたね。
ようやく商品が完成した頃は、まだエシカルという概念がほとんど浸透しておらず、商品を百貨店に持っていっても「本物の牛革じゃないのに、どうして高いんですか?」と言われ相手にしてもらえませんでした。
でも、自分が「初めてのことをやっているんだ」というワクワク感はありましたね。
――幸田さんは当時まだ新しかったIT業界で働かれていたり、エシカルなバッグづくりをされていたりと新しい領域に踏み込んでいくのが得意なのでしょうか?
幸田さん:そうかもしれません。
もっと前の話をしますと、私高専(高等専門学校)に通っていたんです。
高専は理系の学生が集まって5年間テクノロジーを勉強する学校なんですけど、18歳のときにどうしてもグラフィックデザインがやってみたくなって、高専を退学してニューヨークへ行きました。
――入学するのも難しい高専を中退して、渡米される行動力がすごいですね。
幸田さん:ニューヨークの大学でグラフィックの勉強をしてからファッションマーケティングの会社に就職したのですが、まだ世の中にウェブサイトというものがほとんど無かったのでイチからつくる仕事をしていました。
当時、ファッションの情報はショーを見に行ったり、お金を払ったりして「有料で得る」のが当たり前でしたが、ウェブサイトの登場で「情報は誰でも無料でアクセスできる」という時代に移行していきましたね。
帰国してからもウェブサイト(ホームページ)黎明期が続いていて、ウェブデザインの会社を立ち上げました。
――次々と新しいことに挑戦する、幸田さんのモチベーションはどこから来るのでしょうか?
幸田さん:「興味」と「使命感」ですね。
ゼロからイチにするのが好きなんです。
バッグづくりでいうと、ファッション業界の常識がなかったので、いい意味で非常識を突き詰められたんだと思います。
機能性もデザインも良くて環境に配慮した日本製のバッグをつくるとすれば「価格はどうなるのか?」「本当に売れるのか?」という話になってきますよね。
でも、私にはストッパーが無かったので常識にとらわれずに納得するものがつくれました。
最初に販売したバッグは20万円近くして決して安くはなかったのですが、幸い、周りの女性経営者や管理職の方が「待ってました!」と買ってくれたんです。
ただ、コロナ禍にバッグのニーズも変化したこともあり、今は5万円くらいのカジュアルなラインもあります。
販売してすぐに価値観に共感してくださる方が多かったのは、本当にありがたかったですね。
「出世バッグ」として有名に
提供:FUMIKODA
――FUMIKODAさんのバッグはサステナビリティだけでなく、「出世バッグ」としても有名だとお聞きしました。
幸田さん:うちのバッグを持っている方が社長になられたということで、そう言っていただいています。
ある大手化粧品メーカーの社長に就任された女性が、社長になられる前からFUMIKODAのバッグを使われていて、いろんなメディアで「愛用バッグ」として紹介してくださったんですよ。
値段はちょっと高いけど出世する女性が持つバッグとしてブランディングすることができて、ちょうど思い描いていた40、50代以上の管理職の女性というターゲットに届きました。
――ターゲットは、まさに幸田さんご自身のような方ですね。そういった方々とはどこで出会われたのですか?
幸田さん:引き寄せといいますか、いつもバッタリお会いする感じです(笑)。
1000人くらい出席するイベントでたまたま同じテーブルに座った有名な方とか、とあるレセプションでお会いしたファーストレディーの方とか……皆さん、私が持っているFUMIKODAのバッグを見て「素敵なバッグですね」と声をかけてくださったのがきっかけです。
ファーストレディーの方は首相との外遊の際にバッグを持っていってくださったので、メディアを通していろんな方に見ていただけました。
――すごい引き寄せですね。新しいお客様へのプロモーションはどうされていますか?
幸田さん:WEB広告も出していますが一番は口コミですね。
皆さん、購入された方の口コミを見て買ってくださいますね。
機能性、デザイン性、日本製を両立したエシカルなバッグとして訴求しています。
ですから、トレンドは追いかけずにずっと使えるオーセンティックなデザインにしています。
また、大量生産やセールもしていません。
――もう少し価格とのバランスをとってお客様に手頃に提供したいという葛藤などはありましたか?
幸田さん:私がブランドをやっているのは儲けるためじゃないんです。
儲けるためなら他のことをやっていると思います。
「働きやすい環境をつくる」「ビジネスシーンでお役に立つ」「ものづくりを通してお役に立つ」のがミッションなので、そうではないことはあまり自分がやる意味はないかなと。
――幸田さんの生き様がバッグにも表れていますね。最後に、今後の展望を教えてください。
幸田さん:三つほどありまして、一つ目は国内でさらに認知度を高めていくことですね。
FUMIKODAのコンセプトをたくさんの方に知っていただいて、マーケットが広がっていけばと思います。
二つ目に、メイドインジャパンなので海外の方たちに使っていただくことです。
素材も縫製も日本製で伝統工芸も取り入れているので、海外販路の開拓をしていきたいです。
富山県の高岡銅器や福井県・鯖江生まれのパーツなどを使っているバッグもあるんですよ。
最後は、持続可能なことです。
そのために素材メーカーや職人の皆さまとどんどんアップデートしていくことです。
物をつくる人だけじゃなくて、使う人も選ぶ人も同じ意識を持っていないと循環型社会は実現しないと思うので、お互いに意識を高め合って協力していきたいですね。FUMIKODAのバッグが、そうしたものづくりや消費の形をつくっていけたら嬉しいです。